トラブルメーカー | ナノ


「……電話、とらないんですか?」
やっとのことで携帯を取り出し、僕は応答した。
『つか、何してんの? お前がすぐ掛け直すって書いたんじゃん!』
その強気な相手の声に彼女まで驚きの表情を浮かべた。
二三、話して、すぐに向かうと返事した。
「すみません、本当に。夜の待ち合わせには必ずここへ帰ってきますから」
僕は彼女に丁寧に謝ってからオフィスへと急いだ。さびしそうに彼女が笑った。……本当に、申し訳ない。


オフィスに戻るとすでに先ほどの電話の男――高橋と、もう一人の同僚――佐々木が僕を待っていた。
「ホントお前にしては珍しいっていうか、……何してたの? 時間かかりすぎでしょ」
「なんでもない。遅れたことには変わりない。二人には謝る。ごめん」
すると、茶髪の同僚――佐々木がコーヒーを運んできた。
「成瀬が遅れるなんて、ホントびっくり。天地がひっくり返るよー」
「それほどでもないです」
鞄を置いて、僕は社長室へ向かう。勝負はここから。同僚二人より正直めんどくさい男がそこにいるから。

「成瀬、例の件なんだけど、予定時間までなんだからね。くれぐれも気をつけて片付けるんだよ?」
社長室に入るなり、挨拶もなく彼は僕にこう言った。
「……僕って、そんな風に見えますか?」
「そんな風にしか見えないけどなぁ。風の噂によれば、君の心、彼女に奪われちゃうかもしれないって聞いてるよ?」
社長の言葉に小さくため息をつく成瀬。
「普段貴方の押し付ける仕事の方が心配でたまらないので……きっと、奪われたままにはさせておきませんよ。それでは」
挨拶して、すぐに僕は二人のいる部屋へと戻っていった。


prev next
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -