綺麗な人。2
そしてたどり着いた先に、あのオルゴール店……ではなく、通称ウィ・ラヴィリというショコラ店。
あの店は……その、2月14日はいつも込み合ってる。
女の子が、男の子に、チョコレートをあげる日、だから。
僕が入るなんておかしいのかな、……忙しそう。
毎回そう思う。何年前にたったかどうか知らないけど。あの甘い香りはいつまでも続いていてほしいと思う。昨日も今日も、明日も。
永遠に同じ香りがすればいい、とさえ優太は思う。
ここを通る人がもう一度集まってあの幸せそうな笑顔で帰っていけば。
今から振られるのか、受け入れられるのかさえ分からず、でもまたあの甘いにおいの店で来年も笑顔でお店を出てこられる人がいるなら。……少なくともあのオルゴール屋だったころよりは納得できるんじゃないかな。
みんなたぶん、ここで何があったかなんてしらずに、うれしそうな顔でこの道を歩くんだ……。
「あのー、これ、試食しませんか?」
「へ?」
そこには綺麗な女の人が立っていた。生チョコを2・3個持っている。
「お客さん、寒いでしょ? どうぞ店に入ってください。私、ウィ・ラヴィリでバイトしてる椎羅です。あ、ナンパとかじゃないよ。……彼氏いるし、彼はスケーターだから今日は店にこれないって。ひどいよね、女の子の勝負の日よ?」
笑いながらそういって手を引かれる。二つくくりの彼女は大きくなった姉のような感じで、でもそんなわけなくて。健康な彼女の足はそれをしっかりと証明していた。
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