トラブルメーカー | ナノ
綺麗な人。

運命というものはよくわからない。どんなにお金持ちの家に生まれても、どんな貧乏に生まれても……将来、僕にとってそれが正しかったかどうかなんて分からないし、どんなに健康に生まれてきたって次の瞬間に命があるかなんてことも良くわからない。

……全てはめぐり合う瞬間に終わり分かれあうときに始まる、、、そういうものなのかもしれない。


この話は僕『青木優太』のちょっとしたバレンタイン物語である。
※今回は残念ながら後半まで伊藤君は登場しません(笑)



事故のあった町並みは今通っても何も変わっていなくて。変わったと言えば、お姉ちゃんの大好きだったあのオルゴール屋さんが引っ越したくらいの話だ。
そこにいためがねをかけたおじさんはけっこうな老人で、オルゴールのほかにも時計とかそういう雑貨品を飾っていて、その店内をよく姉と二人で回ったものだ。

店内ではクラッシックがかかっているのだけれど、一つ一つをしっかり眺めてみれば、時計の音が心地よく鳴り響く。また、12時ぴったりだったり、15時ぴったりだったりすると、音楽がなる。それぞれの時計が一斉に鳴るものだから、おじさんもちょっと苦笑いしながら「うるさいねぇ、ひとつずつなってもきこえるのにさぁ」なんて言ってたものだ。


「ひとつずつかぁ……」

ひとつずつなったらそれは綺麗に聞こえすぎて……逆に音楽がなっていることさえわからなくなるんじゃないかな。

僕はそう思うんだよね。


朝から伊藤君に電話をしたのだけど、返信も折り返し電話もなく、仕方ないから一人で外に出かけることにした。
どうせ彼は引きこもって勉強しているのだろうが、僕は誰かのそばじゃないと勉強できないし、集中できないなら外に出て遊ぼって思ったわけで。

また、歩いていたらここに来ていた。
何度もたどり着く場所は一緒で、それは新しい環境が出来上がりつつあっても変わらないらしい。……姉のことは、やっぱり、好きなのか、離れないのか、離れたくないのか。


「あぁ」

まただ、一人ぼっちの誕生日。ずっと凍えたまま。

マフラーをもう一度巻きなおす。あの通りを行ったりきたりする。
そして、思い出す。

小さな姉と僕が楽しそうに走り去っていく、あの風景を。



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