トラブルメーカー | ナノ


「そういやさ、リーダー、どうなのよ?」
「どうって?」
御村家での勉強会を終えた後の寿と五十嵐。
「どうじゃないでしょ、あんた、彼氏なんでしょ?」
「あ、まぁ。そうだな……でも、君の代わりに入ったりしてるから」
「げぇ……、まさかずっと俺の代わりやってた?」
「うん、だって仕事――」
「あのさ、とりあえず謝るから。だから……、彼女大切にしてあげな? てゆーか、メールくらいはしてるよね?」
「メール?」
「まさか、それも?」
――だってそんな時間なかったし。
「嘘だろ! 早く電源つけてみろよ」
――なんで焦らせられてんの、僕。
最初はその意味がよくわからなかったけど、久しぶりに開いた携帯を見れば、何件か公衆電話から不在着信とかそういうのが表示されていた。
「俺、聞いたんだけど」
寿がいう。
「お前の彼女、事故に遭いかけたんだってさ」
「……へ?」
慌ててメールを見る。そして公衆電話の意味にやっと気付いた。
「ごめん、俺、今から行ってくるところ、あるから」
彼は屋根の上へと飛び移り、彼女の眠る病院へと空をかけていった。残された寿は一人で家に帰ろうとした。が。
「……ついてきてた? 俺に気付かれないなんてすごいね」
 御村が後ろの家の屋根にいた。
「へぇ、気付かれちゃったか。頑張ったのにな……」
「少なくとも俺しか気付いてないはずだからそれはいいとして……何の調査?」
「え、ただ星を見に来ただけだよ。そしたら面白い話が聞こえてきたから、さ。立ち寄ってみただけ」
「星を見るのは嘘だね。で、どうしたいわけ? 彼女、奪いたいの?」
「うーん、今は様子を見る。リーダーは鈍感っちゃあ鈍感だし。仕事に関してはいつも真面目だったからね、なんだかんだ」
 そう言って御村はほほ笑む。その時、寿は妙なことを思い出した。
「そういやさ、俺が言わなかったらあの人気付いてなかったじゃん? 俺を恨んだりしないわけ?」
「ふふっ、まさか。関心のある彼から彼女を奪うから楽しいんじゃないのか? 少なくとも、関心の失せた彼女なら俺は興味がないよ。俺にだって付き合う機会はいくらでもあった。でも、あの瞬間だよ? 彼女が俺に振り向くんじゃないかって一瞬思っちゃったんだよねぇ……。うん、そういうこと」
 そういうことじゃ、おさまらない気はするけれど。そう思いつつも寿はその話を終了させた。
「俺、今度から真面目に仕事するよ」
「え、いいの? 彼女、心配するんじゃない?」
「いいや。俺はあの人とは違ったやり方を選択するからね。まぁ、見ててよ。先輩だと思ってさ」
「俺の方が年上なのに?」
「そうですね、でも恋愛には経験値の方が必要なんで」
 寿が口元を緩めた。彼自身恋愛はゲームだ、と思い込んでいる。彼が得意とするゲームに関して、本当に寿が負ける確率はほんのわずかしかない。
「信じてみなよ。俺ってやつをさ」
 寿は消える。さっきまで彼が立っていた場所には一枚のリーフしか落ちていなかった。
「タヌキじゃなかったら追いかけるんだけどな」
 そう思いながら御村も家に帰った。少しだけ、リーダーの彼女のことを胸に抱きながら。



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