トラブルメーカー | ナノ


「ああー、この問題、難しい?」
「うん、とりあえず、赤点は取れないから、どうにかしないと」
「じゃあ仕方ないけど、こっちの分野で点をとるしかないよ、リーダー」
御村と寿護と五十嵐 空……いや、俺、まぁ、リーダーだけど、一応。
この三人でチーム組んで三年目、といいますか。俺達の持ってる不思議な能力でこの世界の安全を守る――警察のような仕事をアルバイトでやってる現在進行形の高校三年生、それが僕ら。
ちょうど同じ時期から不思議な能力を持ってしまって、何かの縁というのかな、この三人でよく遊ぶようになって。バイト代わりに警察みたいな仕事を受け持ってる。上司は、本物の警察官、なんだけどね?
「遺伝で点取れるわけねぇだろ? もっとストライキしても解けるような簡単なやつ、ないの?」
「あったらすぐにやってますよ、ねぇ、御村さん」
「そうだね、逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだ」
なんかその台詞、どっかで聞いたことあるんだけど。寿 護はともかく御村はなかなかの成績優秀者と言いますか。頭、良いんだよね、本当に。ちなみに俺と寿は彼女もちだけど彼はいないんだって。
……まぁ、それだから気楽に相談もできる。いや、寿は僕のこと、違う意味で面白がってしまうから、ね?
「ほら、何考えてんの、リーダー?」
「え? あ、今日の昼ごはん何かなって」
ごまかす。
「まだ昼飯には早いかな、リーダーは」
美味しそうなプリンを運んできたのは寿。
――ああ、なんで二つしかないんだよ!
くすり、と互いを見て笑いあう二人。
「それ、解かないとリーダーは一生食べれないよ!」
「それがいいね」
間髪いれず御村がフォロー。
「……やるよ、やります、降参っ」
ちっくしょ、なんかそんな感じはしたけどさ。……次回はハマらないからね、こんな典型的すぎる話術。

   ☆

「そういや、さ」
亜里沙が聞く。
「あんまり、その、……あえてない感じ?」
おそるおそる、という感じ。
「そうね、確かにテスト前だけど」
「……そう、ごめんね。なんか」
「いやいや。生きてるだけで幸せだよ、あ、それに亜里沙が必死なとこ見れて嬉しかった!」
「それ、ほめてんのかなぁ?」
苦笑いのような彼女。私は「ほめてるよ」と彼女の頬を人差し指でつつく。
「あ、彼は来なかったけど」
彼女が帰ろうとした時、私の口が勝手に動いた。
「え、何々?」
「ハウルには出会った」
「え? どゆこと? SM○Pのキムタクが現れた?」
「違うよ、本物のハウル」
ポカンとする亜里沙。あ、いや、そう、だよね、わかんないよね。ていうか、なんで芸能人がいきなり現れるんだよ!
「事故に遭いそうになったとき、男の子が私のことを助けてくれたの」
「……」
「その人がね、目を開けちゃいけないって言ってたんだけど、こっそりみちゃった」
そして私は続ける。
「赤い服を着て、警察官みたいなカッコをした、顔の整った――素敵な人」
私を救ってくれたハウルを、ミラは正確に思い出した。
「それで、その人はやっぱり?」
「いや、彼じゃ、なかったの。彼より一つ分だけ背が小さくって――」
「あ、駄目だよ、そういうの。そのハウルに心取られちゃったりでもしたら――」
「で、でも!」
亜里沙にこういった。
「悪いと思わない? ピンチの時くらい、現れてほしかったの、あの人に。でも来なくって。――もうそうなのかな?」
ドアの先を見つめた。ちょうど金曜日に事故に遭ったし、メールもしたから、来てくれたっていいはずなのに。
「わかったわよ、でも気をつけることね。五十嵐君は、不思議君だから」
ガラガラと音を立てて閉まった扉。残されたのはベッドの上の私だけ。彼女はまた、例の彼氏とでも楽しく遊んでいるのだろうか。
「ねぇ、メールしたじゃん……空君」
涙がこぼれおちた。手の上に乗っかった雫は一瞬だけ切なくきらめいてまた落下した。



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