トラブルメーカー | ナノ



「ねぇ、リーダー、綺麗だと思わない?」
「何が? つかさ、仕事が多いせいで何にもできねぇじゃん?」
「ふふっ、それはリーダーが気まじめだからじゃない? 護はすぐに有給とっちゃうのにさ」
「……じゃあ誰がいつやるの?」
「今でしょ!」
二人で笑いあう。高校生くらいの青年二人はビルの上で上司からの連絡を待っていた。
「――っ」
機械音が鳴る。連絡通知の音だ。
「じゃあ、俺が案件Aだから、リーダーは」
「Bだね」
飛び出した。華麗に空を舞う二人の姿は一瞬で違う方向へと別れていった。空から降り注ぐ流れ星のような美しさだった。

    ☆

案件Aは意外と簡単に終了。というより、少女を助け出すだけなんてあまりにもミッション簡単じゃね? 俺、舐められてる?
「任務完了、か」
そう言って病院を出ようとした時。御村の肩をたたく一人の男が現れた。
「酷いな。酷い。うーん、面白いくらいに酷い」
「え?」
「そいつ、手ぇ出しちゃいけない奴だよ?」
よく見ればそいつは護。御村の上にハテナが浮かぶ。
「このバカ! さっき助けた娘はリーダーの獲物なんだよ。あ……、黙っといてやるからさ」
「う、嘘!ああ、でもそう言えば……あんな可愛い娘が……」
驚いた。さっき交差点で助けたあの少女がリーダーの彼女だったなんて!
「まぁ、御村君に非はないけど、上司も酷いなぁ。ま、最終的に俺がお前を守ったってことで、有給増やしてもらえれば問題ないというか俺的に願ったりかなったり?」
「――なぁ、護?」
「なんですか? 快く取引成立ですか?」
「――人間って、一目ぼれしちゃ、いけないか?」
「はぁ?」
――多分、俺、イケナイこと、始めたいらしい。
風がするりと二人の合間を通りぬけた。


「もう、起きてよォ!」
親友が私の周りでずっと泣いてる。ああ、今、どこ?
あ、いや。天国に連れてかれた……?
「あ、意識がもどりましたか。良かったですね」
白い服の男性。白い壁、白いベッド……ということは、病院だ。
「亜里沙!」
抱きつくような勢いで私に飛び込む亜里沙。加減はしてくれたけど、やっぱり……。
「あぁああああ、ミラぁああああああ!」
「もー、うるさい!」
私の一言で静まる病室。良かった、一人部屋で。泣いた頬を太陽の光で反射させる亜里沙の髪を私はぐしゃぐしゃにした。
「死ぬわけ、ないでしょ? まだやりたいこと終わってないし」
「え?」
「亜里沙の愚痴、私のほかに聞いてくれる人いないでしょ?」
私は笑う。すると空気をよんだのか、医師が軽く会釈して帰っていった。……私の家族は海外にいるし、一番近くにいてくれるのはここにいる亜里沙だけだ。
「続き、しっかり聞かせて」
病室のドアが開かない。このうちに今、聞いてあげよう。……多分、彼はまだ、いや、今回もきっと来ないから。


prev next
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -