トラブルメーカー | ナノ


「ねぇ、あんな男、止めればいいじゃん? 俺にしなよ?」
「え?」
「すきでしょ? 俺のこと」
わざと彼は私の頬にキスをする。顔は見えなくて。でも彼とは違って強引で。……大胆。
「わぁ、綺麗な蝶。けさないでね? ミラちゃん」

……え、うそ、奪わないでぇええええ!

ピリリリリッ! けたたましく、大音量でなり響いた目覚ましで、私、ミラは目を覚ました。

「え、嘘、嘘よね、夢よね……?」
夢の中のキスはやっぱり幻だった。急いでみた鏡の中の私には何も残ってはいなかった。赤い彼のキスは幻。


「ねぇねぇ、聞いてる?」
亜里沙がこっちを見て言う。
「聞いてるってばぁ、で、なんて?」
「え、やっぱ聞いてないんじゃん! 昨日、護が酷いことをって!」
「うわぁ!」
「私のおごりなんだからさぁ、もっと私の話聞いて!」
学校の帰り道。勉強した後だからもう夕暮れに近い。え、もちろんそうでしょ、朝の夢が私の頭からすぐに忘れ去られるなんて、簡単だと思いました?
まぁ、やっぱ、消えないですよね。そうそう、隣の亜里沙は彼氏持ちの親友で、護と付き合ってるのね。そして、私も彼氏は……一応なのかな、いる、という形で。でも親友の彼氏とは違って私の方は全然構ってくれないのよね、なんというか急かすのも悪くて何も言ってないんだけど。
「えぇ、そうなの?」
「うんうん。それで、私、護に怒っちゃってアイスぶん投げて」
「それはすごっ、えっ、あっ!」
その時だった。交差点の十字路で私が車とぶつかりそうに――。

キーッ!急ブレーキをかけようとする車がスローモーションに見える。派手な音が小さい雑音に聞こえて。私は怖くなって目を閉じた。ああ、ぶつかる――!

「危ない奴だなぁ、御嬢様は」
「!?」
助かった――。いや、私は今どこに――。
「怖いなら目を開けちゃだめだよ?」
驚いた。空を飛んでる。いや、違う。ハウルの城のような感じ。あのー、何だったけ、ハウルが空を歩くシーン?
「え、ぇえっ!」
そこで意識は途切れた。ミラはその後病院の中で目を覚ますまで十二時間以上眠っていた。


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