No.10
side 青木
「んー、どうしよー」
デパートなんて久しぶりなんだよな……。どこに何があるのかもわからないし。近くにあったものでいいかな。
「あ……」
僕の向かい側にいいものを売っている店を見つけた。
ショーウィンドウを覗き込む。ガラスに映った自分の顔に一瞬戸惑ったが、その先の商品のほうが今は大事だ。
「あの、すみません」
店員を呼びとめる。
「これの色違いってあります?」
一目ぼれが一番いいって聞くし、これにしよう。
Side 伊藤
「えっと、どのデザインにしよう……」
パソコンで確認したやつ以外にもよさそうな商品がいくつか。どれにしようかと迷っていると一人の店員さんが寄ってきた。
「贈り物、ですか?」
「え、えっと……ま、そんなものです」
「彼女さん、でしょ?」
そう言ってやわらかくほほ笑む店員さん。
「高いところの商品、お困りでしたらいつでも声かけてくださいね、イケメンくん」
……な、今、何と。
「あー、可愛いお客さんだこと」
お姉さん、そういうの、駄目だと思う。。。っていうか、クリスマスに彼氏といるべき人ですよね、こういう部類の人って。
「あ、あの」
去ろうとした店員を呼びとめる僕。
「これとあのデザインのやつ、二つずつセットで……僕のともう一人ので分けて」
「……はい、かしこまりました。ありがとうございます」
僕は、お会計をすませながら、器用な店員の動作を眺めていた。さて、青木君は何を選んだんだろうか……。
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