No.5
Side 伊藤
「……にしても、なんであんな話を?」
教師に呼び出された時の話の内容を伊藤は思い出していた。……別に呼び出さなくても僕は青木と仲良くしていたはずだ。何が目的で彼は僕を一人にしたのだろう。
「彼の過去か? ……一体何があったんだ?」
その時だった。
ーープルルルル
電話が鳴ったようだ。
「もしもし」
ーー伊藤、君?
「青木君!」
ーーごめん。
「あ、いや、今日のは僕がーー」
ーー公園で、待ってる。両親がOKなら、30分以内に来て。
「えっ、ちょ、ちょっと」
ーーツーツーツー。
勝手に、切れた。
「あの、おばあちゃん……」
「何だい、隼人」
こたつで編み物。これが田舎の年末のよくある風景なのかもしれない。
「ごめん、今から公園に行ってくる。遅くはならない」
「じいちゃんに怒られるねぇ。でもいいよ、大切なようなんだろ?」
「うん、ありがと」
「押していこうか?」
「いいよ。おばあちゃんの体が冷えちゃう方のが心配だから」
そういって僕は棚から羽織るものを引き出す。
「気をつけてね」
そう言われて僕は外へと飛び出した。
「ねぇ、青木君。僕は過去君がどんなことを起こしていたとしてもーー友達でいるからね」
交差点を抜けて、装飾が少しだけ施された公園が見えてきた。
LEDの光がまばらに輝くその場所に、彼は黒いコートを着て立っていた。
「約束通り、間に合った」
いつもより白い息が僕の唇から洩れていた。
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