そんなわけで虎屋を後にしたのだが、なんと言うか、今日はタイミングが悪い日だとつくづく思った。

「昨日から星見がうまくいかないからイヤな予感してたけど、当たったよ…」
「なーんだよ奏!辛気くさい顔すんなよ〜にゃはは」
「シュラ…」

こっちにある母方の実家に行った帰り、たまたま京都出張所の前を通っただけだったのだ。だけだったのに、なんとタイミングが悪いのだろう。東京からの増援部隊と鉢合わせしてしまうという最悪の事態が…。そして、その鉢合わせしたという相手が、シュラだったという…。ああホント今日はついてない…

「なぁにブツブツ言ってんだ〜奏?ほらほら、ちゃんと紹介するから来いって!」
「紹介って何。私、今回の件は関わらないから。お願いだから巻き込むな!」
「何言ってんだ!アタシだってこんなめんどくさいことやりたくなのにやってんだぞ!だから手伝え!」
「だが断る!!!」
「アタシが逃がすと思ってんのか!四大騎士がいりゃ今回の件なんて一発で解決だろ!」
「いやホント勘弁していやだ。ほんとイヤイヤイヤ引っ張るな!せっかくの休みが!ていうか隊長のくせにめんどくさいとか言うなよ!」

そんな攻防をさっきから延々と続けていれば、シュラがにやりと笑った。
ああこの顔、イヤな予感しかしないよ…

「ふ〜ん。そこまで言うなら仕方ないけど。あーあ、今回の遠征には奥村燐も参加してるんだけどにゃぁ?大事な大事な弟に何かあってもいいのか〜そうかそうか奏は家族思いの奴だと思ってたけど所詮そんなもんかぁ〜」
「!!!」

その言葉にピクリと顔が引きつったのは仕方ないと思う。

「燐が、来てる…」
「ま、正確には候補生全員だけどな。」
「……」
「さ、どうする?奏?」

折れまいと思っていたが、燐の名前を出されて戸惑ってしまう。父さんが死んだと知って真っ先に燐に会わねばと思っていた。だが膨大な量の任務のせいで今の今まで連絡を取ることすら出来なかったのだ。いい機会と思いつつ、燐は私には会いづらいのではないかと考えてしまう。あ〜〜〜もう!!考えてもしょうがないか。

「燐の名前出すとか卑怯だ!」
「にゃは。手伝ってくれるんだよな?」
「分かったよ。ただし、私が四大騎士ってことは伏せるのが条件。ただの上一級祓魔師ってことにしといて。これは日本支部の任務なんだから」
「オーケーオーケー。ま、奏がいりゃ百人力だろ」
「言っとくけど私、前線には出ないからね!あくまで手伝いだから!!ちょっと!シュラ聞いてる!?」
「わーっかったて!んじゃ奏は虎屋の方の手伝い頼むわ!連絡しとくから!」

超いい笑顔で出張所に戻って行ったよ。燐の名前さえ出なかったら折れなかったのにいいいいいい!!!!
まあとりあえず虎屋の応援に行くか。と数時間前に去った虎屋に戻ってきたはいいが、何か騒がしいんですけど。ガッシャアアアンって窓割れる音とか聞こえてきたよ…。ついでに誰かが(だいたい検討はつく)が暴れてる音も…。イヤな予感しかしないよ。なんなの今日は朝っぱらから…ホントついてない…泣いていい?もう何かめんどくさくなってしばらく外で様子を見ていたら誰かが場をおさめてくれたようだ。それを見計らい、部屋に入る。

「おい蝮!さっきの坊に対する態度は何なんや!?」
「なんや、そのままのことを言ったまでや」
「なんやと、この…!!」

「何を、なさってるんですか?」

にっこり。それはもう凍えるほどの冷たい笑顔(と後にその場にいた者は語る)で声をかければ、柔造さんも蝮さんも固まった。

「奏、さん?」
「はい奏ですが?」

にこにこと2人に笑いかければ2人ともすっごく苦虫をつぶしたような顔をしていた。あは。そんなに怖いですか私。

「な、なんでまたここに?」
「ああ、それは…「不知火さん?」
「?はい」
「ああやっぱり、さっき霧隠隊長から連絡があったから。いやあ増援と言ってもこっちもてんてこまいだったから手伝いを買って出てくれたとなると心強いですよ!」
「まあ、たまたまこっちに来てただけなんですけどね…足手まといにはならないようにしますのでどうぞよろしく」
「上一級祓魔師の方が足手まといなんてとんでもない!こちらこそよろしくお願いします」

柔造さんとの会話がシュラから連絡を受けた祓魔師との会話で途切れてしまったので改めてそっちの方を向けば、おもしろいくらいぽかーんとしてこっちを見ている柔造さんがいた。

「柔造さん?」
「上、一級…祓魔師!?」
「はい」
「え、やって、さっき、え!?」
「なん、奏さん祓魔師やったんか!?」
「なんやそないなこと一言も言うとらんかったやないか!」

何か、柔造さんを筆頭に金造くん蝮さんにも驚かれたんですが。

「えーと、まあ聞かれなかったので(というか関わる気全くなかったので)」

そう言えば、みんなすごくなんというか、アレな顔してた。

「では改めて、上一級祓魔師の不知火奏です。よろしくね」



(上一級…俺より上!?ていうか不知火てどっかで…)
(みんなの驚きっぷりがおもしろいなぁ。あれ、そういやまだ燐見てない…)

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