買い物の帰り道、父さんと父さんに背負われている燐に遭遇した。ていうか、燐が、燐が、傷 だ ら け なんですけど…!!

「ちょっと、また?」

そう言いながら駆け寄ると父さんは苦笑し、燐はちょっと目に涙を浮かべていた。な、何だこの生き物かわいい。きゅん。
…じゃなくて!

「あーあーかわいい顔にたくさん傷作っちゃってまあ」

そう言いつつ鞄から絆創膏を取り出し、燐のほっぺに貼ってやる。
毎回思うけど小さい子のほっぺたって何でこんなぷにぷにしてるんだろうね。マシュマロみたい。かわいいなぁ食べちゃいたい。調子に乗ってほっぺたを堪能してたら燐にいやいやされてしまった。ちぇ。

「しかし今回も傷が多いね。帰ったらちゃんと手当てしなきゃ」

「……」

いつもなら反応してくる燐だが今日に限っておとなしい。
あれれ。不思議に思ってる父さんのほうを見ると

「まあ、何だ。燐にもいろいろあるんだよ」

と返されてしまった。いろいろって何ですか。男同士の秘密とかですか。女の私は仲間ハズレ?いや、男同士って燐はまだ男の子だし…

「ねえちゃん」

うーんうーん考えてると燐に声をかけられたよ!よかった。お姉ちゃんてっきり嫌われたかと!そんなことを思いつつ高速で答える私。

「んー?なぁに?どうした?」

「ねえちゃんは…」

言いよどむ燐に目線を合わせ待ってやると

「ねえちゃんはおれのことこわくないの?いらなくないの?」

と言われ、ぽかんとしてしまった。はい!?何言っちゃってるのこのこ!?

「ちょっと、ホントに何があったの…?」

あまりにも突拍子のないことを言われてしまい、私の頭は思考を止めたようで若干声が上ずってしまったのはしょうがないと思う。うんしょうがない。

「だって父さんはおれのこと人間だって言ってくれたけど、みんなおれのことあくまだって。いなくなればいいって…おれ…」

燐が最後まで言い切る前に父さんの背中から燐を抱きとめ、力いっぱいぎゅーっとしてやった。

「!!」

「…燐は人間だよ。ここにいていいの。他の誰がなんと言おうと私も父さんも雪も、燐のこと大切に思ってる。だからそれから先は言っちゃダメ。」

優しく諭すように目を見て言えば、燐は私にしがみついて大声を上げて泣き出してしまった。泣き顔も可愛いとか思った自分はこの時からちょっと、いや、かなり色々だめだったんだと…思いますはい。
そのあと燐はすぐに泣きつかれて寝ちゃったんだけどね。寝顔もかわいい…
燐が眠りに落ちる直前か直後か

「たとえ世界が燐を拒絶しても、私は燐を受け入れる」

そう真顔でつぶやけば、父さんは

「お前は燐に危害が加えられる前に制裁をくだしそうだけどな。」

と、ガハハと笑いながら茶化してきたので(人がシリアスに入ったのに)父さんの夕食がみんなと比べて質素なったのは言うまでもない。




(おーい奏、おれの飯が他のやつらと比べて質素なのは気のせいか)
(やだ。父さん目が悪くなったんじゃない?燐、雪いっぱい食べるのよ。)
(俺のハンバーグ…)

夕飯はみんな大好きハンバーグでした。

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