私は、藤本奏は父さんが大好きだ。どのくらい好きかってたぶん血が繋がってなかったら結婚したいくらいに…!いや、ダメだな。父さんあんなだけど母さん一筋だったしな。やっぱりこれは家族愛だな。あ、父さんも好きだけどもちろん燐と雪もね。だから、今日は特別な日だからいつも以上に張り切っちゃうんだ。

「父さん、誕生日おめでとう!」

そう言うと父さんは心底驚いた顔をして私を見ていた。ありゃ?もしかして…

「もしかして、父さん自分の誕生日忘れてた…?」

そう聞くと父さんは苦笑い。やっぱりね。父さん、私と燐と雪、母さんの記念日はちゃんと覚えてるのに自分のことには無頓着なんだよねぇ。

「もー!せっかく久々に腕をふるって料理頑張ったのに」

「いやーまさかこの歳になって祝われるとな」

ホントは照れ隠しって分かってるけど。

「まぁ、父さんらしいけど。誕生日おめでとう。はい、今年のプレゼント」

今年は残念なことに雪も燐も学校の行事と被ってしまったので久々の家で二人だけのお祝いだ。修道院のみんなも家族で過ごしたいだろうからって。そんなこと気にしないのに。

「お、何だ?眼鏡?」

「うん。前に視力が落ちたって言ってたから。度数とか大丈夫?」

「おぉ、大丈夫だぞ。ありがとな奏。奏が前に眼鏡貸せって言ったのは今日の日のためだったか」

「ん。だってフレームは母さんからもらった大事なものなんでしょ。だから、ね」

そうつぶやくと目を細めて私の頭を撫でてくれる。やっぱり私は父さんが好きだ。母さんが亡くなった分、私にたくさんの愛情を注いでくれた。それがとても嬉しい。涙が滲み出てくるのをごまかすように顔を上げ、

「さ、今日はたくさん料理作ったんだから冷めないうちに頑張って食べてよね!」

「ああ、奏は母さんに似て料理もうまいからな」

私が泣きそうになってるの、気付いてるんだろうなぁ。そんなことをボンヤリ思いながら、ケーキのロウソクに火を灯した。
父さん、生まれてきてくれて、私を愛してくれてありがとう。





(うまいなこれ!)
(ホント?たくさんあるからたくさん食べてね!)




たぶんヒロインが17歳くらいで燐と雪が小学生くらい。




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