いや、手伝うって言ったよ。うん。言ったけど、言ったけどちょっとこれ、こき使い過ぎじゃね!?君たち増援部隊じゃないの!?応援でここに来てんのにさらに私をこき使うってどういうこと!?シュラあとで締める!! どうも、上一級祓魔師の藤本、じゃなくて不知火奏です。手伝いに回ってからホントこき使われてイライラもピークに達しそうです。医工騎士もっとキビキビ働け! 燐にもまだ会えてないし、もう私の癒しが…!! 「はぁ…」 「なんや奏さん疲れたんか?」 「へ?」 「ため息ついとったやろ?」 「え?」 どうやら無意識にイライラが外に出てしまっていたらしい。相変わらず重度の患者の治療をしながら柔造さんと蝮(呼び捨てでいいと言われた)の監視?を任されてるわけだけど、ふいに声をかけられてどきっとしてしまった。 「なんや無意識かいな」 「あはは〜」 「ふんっアンタのお守りさせられたらそら疲れるやろ!なぁ奏姉さん」 「ちょ、蝮…」 「蝮ィ。お前…!」 「あー、はいはい。2人ともストップ!また喧嘩したら怒りますよ!」 『うっ』 2人とも相変わらず顔を合わせれば喧嘩なんだけどもう何か慣れたよ。何で仲良く出来ないんだろ。昔からこの2人はもう…。 「そない言うたら奏さん、初めて会うたときとずいぶん違うて何や砕けた話し方しはるようになったなぁ」 「へ?そ、ソウデスカネ」 「何で片言?」 「あー…なんというか、最初にここに来たのはたまたま知り合いに捕まったというかなんと言うか、そんなんで、まあ色々ありまして…?」 「まあ、何や聞いて欲しくないみたいやからあんま聞かんどくけどな」 にこっと笑いながら言われて、何で、いちいち爽やかなんだこの人は…そう思いながら顔をじっと見つめていたら、向こうもこっちをじーっと見つめていることに気づき、恥ずかしくなってきた。な、何!? 「じゅ、柔造さ…」 「それや!」 「へ?」 「何で蝮は呼び捨てなのに俺はさん付けなんや?」 「え、えっと…蝮は呼び捨てがいいと言ってきたからで…」 いきなり指をさされ声をだされたからびくっとなってしまった。まさか名前呼びのことを言われるとは… 「奏さん失礼やけど俺と歳そう変われへんやろ?」 「…25です。」 「何ややっぱ同い年やったんやな」 「柔造さんも、25なんですね」 「おん。だから呼び捨てにしてくれてかまへんよ。なんや奏さんにさん付けと敬語使われるとむずがゆくてなぁ」 「じゃあ、私も呼び捨てで。同い年にさん付けって気になるから」 「ほうか。ならこれから奏って呼ぶさかいよろしゅうな」 「うん。よろしく柔造」 にっこり笑って返せば柔造が顔を真っ赤にして向こうを向いてしまった。え?どうした!? 「え。大丈夫?まさか魔障が悪化!?それとも熱!?」 「いや、なんでも、あらへん」 「そんな真っ赤な顔で言われても説得力ないからこっち向いてほら!」 「!!」 ぐいっと柔造の顔を自分の方に向けてそれこそ無意識でおでことおでこをくっつけたら、ものすごい勢いで離れられた。え?え? 「なっなっなっ何…!!」 「何って熱あるかどうかを…」 「だからってデコとデコをくっつけんでもええやろ!!」 言われて自分が何をしたか気付いて、今度は私が真っ赤になる。わ、私何やってんの!!こ、これは小さい頃燐と雪が熱を出したときによくやったことで、別に他意はなくて、でも高校の時に柔造が…熱出したときもよくやってたし…!そうぐるぐるとしていた思考がはた、と止まった。 そうだ、もう高校のときとは違うんだ…。なに、やってんだ私。 「ご、ごめん…弟たちが熱出したときによくやってたから…だから…」 言い訳じゃないけど、話しだしたら目に涙がにじんできて、まともに柔造の顔が見れなくなって気まずい空気が流れてどうしようと思ってまたぐるぐるしだしたら 「あーー…すまん。ちょおびっくりしただけや…」 私の頭をガシガシ撫でながら苦笑したように話す柔造が視界に入り、涙が一滴こぼれてしまった。何で、謝るの…悪いのは私なのに…何で、そういう優しいとこは変わってないの…。 「!!なっ奏!?」 「ご、ごめ…!!」 「この申が!何、奏姉さん泣かしとるんや!」 「違うの蝮!ちょっと弟たちのこと思い出したら懐かしくなっちゃって…!あははごめんね。いきなり泣いちゃって。弟たちに全然会ってないからホームシックになったのかも」 「…なら、ええんやけど奏姉さん働き過ぎや。手伝いで来てるんやからちょっとは休憩したらええ」 「うん。ありがとう蝮。柔造もごめんね」 「ああ、大丈夫か?」 「うん。でもさすがにちょっとこき使われて疲れちゃったのかも!ちょっと休憩してくるね。2人とも、私が居ないからって喧嘩はだめだからね!」 そう2人ににっこり笑って声をかけ、私は部屋から出て行った。 過去・現在・未来 (奏……なんや、この感覚) (あーあーやってしまった。大丈夫、だよね…) ←戻る |