寂しい。悲しい。怖い。いろんな感情がぐちゃぐちゃと混ざり合う。稀に、本当に稀にこういう状態に苛まれるときがある。いつもなら父さんにすがりついて、しばらくすれば落ち着くんだけど、その父さんはもう居ない。困った。こういうときに限って、夜に一人…どうしよう。どうしようどうしようどうしよう…。やだ、一人は、イヤだ…何で私、今一人なの。一人は、いや、だ… 「奏?」 「や、…だ……」 「…?」 「こわ、い。いやだ…や、だ…!」 「!?おい!奏!!」 大きな声で呼ばれて振り向くと、焦った顔をした柔造の顔が飛び込んできた。 「柔、造……」 「どないした?声かけても気付かんし、なんや、泣いとったんか?」 「……ぁ…っ」 言葉にしようとしてもうまく声に出せず、そのまま柔造に抱きついた。みっともないとか恥ずかしいとか、全然考えられなかった。大好きな人が、今そばに居てくれる。それだけで十分だったから…。 何か言われるかな、と思ったけど柔造は何も言わずそのまま抱きついた私を抱きしめていてくれた。…何だこのイケメン。こんなだからいろんな女の人にモテるんだよ…!ばか!!もうバカ! 「柔造のバカあああ!!何でそんな出来た男なのバカ!」 「んなっ!バカとはなんやバカとは!人が心配しとったのに」 「……う。ごめん…もう大丈夫。でも、もう少しこのままがいい」 「なんや、今日はえらい甘えたやな」 「うん。こうしてると落ち着く」 何か、ホント抱きついてると落ち着く。なんだろう。好きな人、だからなのか…。う〜ん。でも何か柔造って、 「お父さんみたい…」 「…なんやって?」 あれ?口に出てた!? 「奏、もっぺん言うてみ」 「え、えっと柔造って何か、こうお父さんみたいな雰囲気があるからつい…ご、ごめん」 「それはあれか。俺が老けてるっちゅうことか?」 「いや、そういうんじゃなくて、こう、子供がいたらいいお父さんになりそうだなぁ?みたいな?柔造子供好きだし」 あああ!お父さんみたいとかやっぱり失礼だったよね!でも柔造ってホントいいお父さんになりそうだし…なんか、こんな人と結婚したら幸せなんだろうなぁ。…って何考えてんだ私。ああもう何か今日の私、変!!久々にあんな感情が出てきたからか!もうやだ穴に入りたいいいいい!!恥ずかしい!誰もいないとはいえ柔造にずっと抱きしめられてるのが恥ずかしくなってきた!やだもうやだ!!そんなんで柔造の腕の中から抜け出そうともがいてみたんだけど、あ、あれ?抱きしめる力が強くなってきてるような…? 「じゅ、柔造さん?ちょっと、もうそろそろ離して?」 「……いやや」 「え?え?なにゆえ!?」 「……」 問いかけても黙りしたままで、でもなぜかじーっと顔を見られてて何かいたたまれなくなってきた。な、何? 「いいお父さんか」 「うん?柔造さん?話が見えないよ?」 「奏との子供やったら、かいらしいんやろうな」 「え?な、え!?」 「なあ奏今日はここに2人しかおらん」 ちょ、っとこれは何かヤバい感じ…と思ってたら顔が、ち、近い!え、ちょ… 「…んっ!んぅん……ふぁ…ぁっ…!」 「奏はどこもかしこも甘いなぁ」 そう言いながら首筋を舐められ、「ひんっ」と変な声が出てしまう。や、もう気持ちも何かやらしい気分になってきた…や、やだ…恥ずかしい… 「じゅ、柔造…」 「奏、布団いこか」 「う、…ん…」 お父さん≠恋人 (うーー腰痛い…!) (奏は布団のなかでもかいらしいなぁ) (ばか…!あああ流された私もばか!) ←戻る |