第一話
「おはよう!」
「あ、おはよ」
毎朝生徒たちの間で交わされるあいさつは、とても気持ちのよいものだった。
この学園は先生、生徒ともに問題は多いけれど、元気といった面ではどこにも劣らないのではないだろうか。
「セーッフ!!」
「残念、余裕で遅刻だ」
「ええ!ウソ!?」
門に滑り込んだゴールドを鼻で笑うのはグリーン。
容姿、性格ともに人気のある彼は生徒会長。それ故に、毎朝門の前で、服装だったり、ゴールドのような遅刻犯をチェックしているのだ。
「余裕じゃねえっすよ!たった1分じゃないすか!」
「ふんっ1分でも遅刻は遅刻だ」
「うわっ、ケチ!それくらいオマケありでしょー!?」
「お前に限っては絶対にしてやらん」
ぎゃんぎゃんと噛み付くように抗議を申し立てるゴールドに聞く耳など持たないグリーンである。
もともと生意気な後輩を、この生徒会長は良く思っていないのは事実だ。
「そんな狭い心じゃあ、いつまでたってもレッド先輩と付き合えないはずだよなぁ」
しかしゴールドがレッドの名前を出せば、あっという間に形成は逆転。ぼっと耳まで赤くなったグリーンは、「レ、レッドは関係ないだろ」と弱々しく呟いた。目はきょろきょろと忙しく地面を行ったり来たり。かわいそうな位に、動揺が隠せていない。
「あっ!レッド先輩!」
いきなり叫んだゴールドにつられて思わず振り向いてから、グリーンはしまっただまされた、と思った。
そしてそんな良いチャンスをこの後輩が逃すはずが無いのだ。
「お仕事ごくろーさんデスッ!!」
そんじゃお先ー!となんとも憎たらしい笑みを浮かべて校舎へと走り去ったゴールドの後ろ姿を見送りながら、グリーンはがっくりと肩を落とした。
よくよく考えてみれば、早々と登校をすませてしまうレッドがいるはずが無いのだ。
あーあ、と小さくため息を吐いてから、グリーンはもたもたと教室へ向かう。
残念なことに、窓から自分とゴールドのやりとりを友人と笑いながら眺めている想い人がいるなんて、これっぽっちも気付かなかった。
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