最後に紅茶を。 | ナノ
その裏側には愛情を


俺のタイプは出るとこ出てて、それなりに色気があって、欲を言うなら年上で。だけど彼女はそれに当てはまってるわけでもないし、絶世の美女ってわけでもなかった。なのに、何処かに惹かれるものがあったんだ。
初めて会った日に見た、明るく振舞っているのに何故か儚く見える雰囲気とか、脆く壊れそうな笑顔とか。歪んでいるかもしれないけど、多分そうゆう所に一瞬で惹きつけられたのだと思う。見返りとか関係なしに、ただ守ってあげたいと思った。自分のものにしたいと思った。これを一目惚れと呼ぶには少々語弊がある気がするけど、それ以外にしっくりくるものもないからもういっそそれで良い。
講師の卵が生徒に特別な感情を抱くなんて許されるはずがない。しかも彼女は今年大学一年になったばかりなのだから、年の差も相当だ。それでも気になって仕方がなくて、入学式のあの日からずっと彼女のことを探しつづけた。やっと見つけたのは入学式から数日経った、大学のカフェテラスでだった。

「私、幸村さんに惚れちゃって」

声をかけようとした瞬間、彼女の口から発せられた言葉を聞いて俺は動けなくなった。俺に惚れてる?そんな泣きそうな顔してなに言ってるんだ。直感的に「嘘だ」と思った。根拠なんて何もないけど、この子が思っているのは俺じゃない。当たらないで欲しいと願うほどそうゆう勘は当たるものだ。入学式の時も彼女と一緒にいた桃春という子が「愛、元彼のことを引きずっていたんですよ、でも安心して幸村さんに任せられます」と言ってきたのである。「引きずっていた」んじゃないだろ。まだ「引きずってる」んだ。顔を見れば他人でも分かる。この桃春という子はそれが分かっていて俺を利用して忘れさせようとしている。そんなことはすぐに理解出来た。
でも、そんなの関係ないんだ。
利用されていようが、彼女がまだ元彼のことが好きだろうが。これから隣にいるのが俺になって、俺のことだけを考えてくれるようになればそれでいい。彼女はとても愛に飢えていて、元彼を忘れようと意地になっている。だから少し挑発すればすぐにそれに乗った。
弱っているところに漬け込むなんて、狡いって分かってる。それでも決して離したくはなかった。元彼がまだ好き?だから?忘れさせてやれば良い。そしていつか幸せに溺れて死んでしまうくらい俺のことしか考えられなくなればいいよ。
触れたら壊れてしまいそうな君に、俺は堕ちてしまったんだ。
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