カモミール | ナノ


02


なんとかホームルームに間に合って、私は今、担任に連れられ三年六組の前にいる。



「じゃあ小野、合図をしたら中に入ってくれ」



そう言って担任は教室の中に入って行った。中からは担任の話し声が聞こえ初め、どうやらホームルームが始まったようだ。らしくもないけど少し緊張してきて、深呼吸をする。



「それと、転校生の紹介だ。おーい、入っていいぞ」



担任の合図が聞こえて、私は教室の中に入った。それとほぼ同時に、一気に教室が騒がしくなる。



「ちょっ、可愛くね!?」

「えー、男子ってすぐああゆう子もてはやすよねー、よく見て見なよお」

「いやあれはガチでやばいって」



そんな声があちらこちらから聞こえてきたけど、生憎容姿の話はもう聞き飽きている。褒められても、貶されても、何とも思わない。私は彼らの言葉を無視して教壇の前にたち、口を開いた。



「---中学から転校してきた小野杏里です。仲良くしてやってくださ「あんた今朝の!!」



私の自己紹介は、いきなり叫んで立ち上がった女生徒によって阻まれた。唖然とするクラスメイトや教師を無視し、彼女は続ける。



「この女、生意気に朝リョーマ君に喧嘩売ったのよ!リョーマ君泣きそうで可哀想だった……!」



一層教室が騒がしくなったのは決して気のせいじゃない。嗚呼、ここに来ても同じなのか。また、疎まれるのか。



「あの子がぶつかってきたのに謝らなかったから、注意したら口論になっただけだけど」

「嘘吐くんじゃねえよ!ちょっと顔がいいからって、調子乗んな!」



あーもうめんどくさい。なんなの、私が何したっていうの。顔が良いから調子乗るとか、冗談じゃない。私は整い過ぎたこの顔のせいで、今まで散々妬まれてきた。こんな顔、大嫌いなのに。



「……うるさいんだけど。先生、もう席ついて良いですか」



本当、私は馬鹿だ。人に妬まれる要素があるのに、さらに自分で追い討ちをかけるような行動しか出来ない。悔しそうにする彼女を横目に、私は静かに席に着いた。
担任はようやくはっとしたようで、「あー……仲良くする様に」とか言って教室を出て行った。
転校生が来たら普通は席の周りに群がって、質問攻めをするんだろうけどそんな気配はない。むしろさっきの女生徒を中心とした女の子達に睨まれている。別に、そんなの気にしないけれど。

でもそんな女の子の中に、一人。

色素の薄い髪と優しそうな目をした男の子がいた。その人は何やら私に怒鳴って来た女生徒と話をしている。かと思ったら私の方へ来た。何だろう。嫌な予感がする。目の前にきた男の子は、優しそうに見えた目を、ゆっくりと鋭いものに変えて私に言った。



「僕は不二周助。後輩と僕の彼女が世話になったね。お礼をしなくちゃいけないかな」



彼がそう言ったあとに私の頭上から落ちて来たものは



「メリークリスマス。初雪のプレゼントだよ」



そんな綺麗なものではなく、大量の石灰だった。
彼の後ろからは、女の子達のクスクスという笑い声。そんな状況の中で、ああそういえばクリスマスが近いのか、と自分でも驚くほど冷静に、関係のないことを思った。



「どーも、メリークリスマス」



そして美しい容姿と引き換えに、醜い心を持つ彼等を哀れで、皮肉にも綺麗だと思った。



クレオメ
花言葉:貴方の容姿に酔う



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