女神はにやりと微笑んだ | ナノ

毒林檎は苦くて甘い蜜の味

あれから私と不二は何度も唇を重ねた。次の日も、また次の日も彼は懲りずに私の元へやって来て、好きと囁く。それを完全に拒むことが出来ない自分にも嫌気が刺した。第一、彼が本気なのかも分からない。そんな思考はまた熱に溶かされて何も考えられなくなる。私と不二は付き合っているのか?そう聞かれれば答えは間違いなくノーだ。だからこの行為がおかしいことは分かっている。何故彼はこんなにも私に執着するんだろう。別に私にこだわらなくても、彼くらい格好よければいくらでも女は寄って来るだろうに。それをそのまま不二に告げれば、彼は楽しそうに笑うのだ。



「君じゃなきゃ駄目なんだ」

「意味分からな、ふぁっ、」



熱を帯びた青で見つめられて、言葉を発しようとすればまた口を塞がれる。彼は甘く誤魔化すのが上手い。息苦しくなって不二の胸板を叩けば、ようやく唇が離れ、代わりに舌が耳をなぞった。知らない感覚に全身がぞくぞくする。



「ちょっ、やめ、」

「って言う割にはそこまで嫌がらないよね。逃げようと思えば逃げれるはずだよ」



そんなのは分かってるけど、体が言うこと聞かないのだから仕方がない。なんていうのはただの言い訳で全く持ってその通りなのだ。この甘美なキスの後に残るのは必ず虚無感だけなのに、私はそれを拒めない。



「蜜葉のそんな顔も、声も、熱も。知っているのは全部僕だけで良い」



そう真剣に言った不二の言葉に、私も知っているのは不二だけで良いと思ってしまったのは何故だろう。熱に浮かされているせいだけではないのは分かっている。彼がずっと待ち望んでいた私の心を溶かしてくれる王子様なのかもしれない、そう思う反面、信じて良いのか分からないのである。不二も私のことを自分を飾るためだけのアクセサリーとしか思っていないの?私が拒めばすぐに他の女の子と付き合える?答えを知りたくないから、私は完全に彼を突き放すことが出来ないのだ。

王子様は深い眠りについた姫の心を、キスで少しずつ溶かしていく。甘い毒で侵しながら。


mae tugi

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