女神はにやりと微笑んだ | ナノ

聖書に綴られた文字なら雨で滲んで読めなくなった

自分の容姿がある程度整っているのは知っている。中学の時にそれなりに努力したこともあってか、高校に入った頃には大抵の人には可愛いね、と言ってもらえる様になっていた。そしてその頃から沢山の人に告白されるようにもなった。褒められて嫌な気分になる人はそういないだろう。初めは素直に嬉しかったし、大分浮かれていたと思う。しかしながら、私はあることに気がついてしまったのだ。彼らは、「本当の私」が好きなのではないということに。
それに気がついたのはある男子が私に告白してきた次の日のことだった。私を呼び出した日に、確かにそいつは「君のことが好き、本気なんだ」と言ってきたのである。私はその男子と特に関わりもなく、特別な感情はなかったので気持ちに応えることはできなかった。だけど、私なんかに本気と言ってくれるその人に対して精一杯の感謝の気持ちを述べ、できるだけ優しく断った。それが私なりの告白してきた男子への敬意の表しだったのだ。
しかしその敬意はずたずたに引き裂かれることになる。その男子は翌日、違う女の子と付き合い始めた。それはそれは可愛らしい女の子と。
恋愛に失敗して、次の恋愛に進むのは悪いことだとは思わない。むしろ当たり前のことだ。だけど諦めるには早すぎるだろう。私はどうしようもない虚無感と憎悪感に襲われたのだ。あの人は私のことを「本気」と言ったのである。私に振られた次の日に、他の女の子と付き合えるほど軽い気持ちだったくせに。あの人は私の何を分かっていたんだろう?答えは単純だった。彼は私の容姿、上辺だけが好きだったのだ。中身なんて何もみていないから、思い入れもなく簡単に諦められるのだ。
私に好意を寄せる男子が皆そうゆう根性の奴ではないだろう、初めは思っていた。いつか本当に私を見てくれる人が現れるだろうと。だがそれも淡い期待で終わることになる。私に告白してきた男子は皆、一週間以内に可愛らしい彼女を連れ歩いていた。どうやら私は男にとってはアクセサリーでしかないらしい。彼らは可愛い彼女が出来れば誰でも良いのだ。それが分かっていてその男達と付き合う女達にも虫唾が走った。

私が思う恋愛は、お互いに大切に思って、好きあってというものだった。だけど思春期になるに連れて恋愛というものはあまりに歪んでいるということを知ってしまったのだ。勿論、ドラマのような綺麗な恋愛をしている人も世の中にはいることを知っている。だけど、私が実際に見てきた恋愛はあまりに汚すぎた。周りは口を揃えて「彼氏が欲しい」「彼女が欲しい」という。私にはそれが「自慢できるアクセサリーが欲しい」としか聞こえなく、「付き合ってください」という告白もまた「自分を着飾るアクセサリーになってください」にしか聞こえないのだ。だから私は自分に好意を寄せる相手に敬意を払って優しく断ることはしなくなった。ある時は思わせぶりをしてからこっぴどく振り、ある時は酷い態度をとって断った。罪悪感なんて全くないのは、彼らはそれをされるだけの無礼を私にしていると思うから。だって、要は好きでもない癖に好きと言ってくるんでしょう。本当、バカにしないで欲しい。そんな安い嘘の言葉にまんまと引っかかる周りの女と一緒にされるなんて、私も見くびられたものだなと思った。



「君のことが好きなんだ。僕とつきあってくれないかな」



目の前の彼も例外じゃない。

そう、これは愛を知らない眠り姫の物語。


mae tugi

booktop


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -