それは、ある平日の夜でした。

「ねぇきょーすけ、こんどのにちよーびどっか行きたい!」
「ああ?」

唐突に声をあげたのは子犬のてんま。期待に目をキラキラと輝かせ、尻尾はふりふり、箸を握った手でどんどんテーブルを叩いています。

「さいきんきょーすけいそがしくてぜんぜんオレたちと遊んでくれないんだもん!せっかくの休みのひくらい遊ぼうよ!ね!」
「ボクもさんせい!きょーすけくんと遊びたい!」
「急に何言ってんだ!つーか箸持ってテーブル叩くな、行儀悪いぞ!」
「「はーい!」」

一旦手に持った箸を置いて、両手でたしたしとテーブルを叩きながら、「ねぇきょーすけ、どっか行こうよ!」「きょーすけくん、あそんで!」と口々に鳴く彼らに、剣城は「とりあえず早く食え!いつまで経っても片付けられねぇだろ」と急かしました。
てんま達は素直にご飯を食べ終わり、食器を洗う剣城の足にまとわりつきながら「行こうよ!」「行こうよ!」とねだります。

「あーもう分かった、日曜日どっかに連れてってやるから!」
「えっホント?」
「わーい、やったねたいよう!」
「うん!」

きゃいきゃいとはしゃぐ彼らの様子に、ふっと剣城の顔も緩みます。そんな彼を見たてんまとたいようは、「あ、きょーすけがわらってるー!」とぺたぺた剣城の足にくっついてきました。

「おわ!?ちょ、お前ら離れろよ!」

そうは言いつつされるがままになっている彼は、やっぱりこの子犬達に甘いのかもしれません。


「で、日曜日何食べたいんだお前ら」
「え?うーんと…………きょーすけのホットケーキ!」
「あ、ボクも!きょーすけくんのホットケーキはせかいいちだよね!」
「は?ホットケーキて………冷めたら美味くないだろ?」
「そんなことないよ!さめたっておいしいよ!」
「きょーすけのつくったものはつめたくなってもおいしいよ!」
「…………………ああそうかよ、ありがとな」
「「えへへ!」」

照れたように顔をしかめて、ふっとはにかむ剣城。嬉しそうにすり寄ってくるてんまとたいようの兄弟の頭をぐしゃぐしゃと撫でながら了承します。

「だけどそれだけじゃ栄養取れねぇから、他になんか持ってくぞ?」
「うん!」
「わあい、たのしみにしてるね!」

きゃっきゃとはしゃぐ二人ですが、ふと思いついたようにてんまは動きを止め、剣城に尋ねます。

「ねぇきょーすけ、にちよーびどこ行くの?」
「んー、とりあえずちょっと遠くの森あたりまで出かけようかと思っているが」
「え、そうなの?」
「じゃあピクニックだね!」
「わあ、たのしみ!ね、てんま!」
「うん!」
「とりあえずお前らはもう寝ろ、遅いし」
「えー、もうちょっと話してたい!」
「ボクもー!」
「いーから、チビどもはもう寝る時間だ、じゃねぇといつまでたってもチビのままだぞ?」
「オレチビじゃないもん!」
「チビはいや!」
「十分チビだろお前は。ほら、たいよう寝るっつってんだからお前も大人しく寝ろよてんま」
「む〜……」
「ね、はやくねよ?はやくねたらそれだけにちよーびもちかづくでしょ!」
「………うん!それじゃお休み、きょーすけ!」
「おう、お休み」

そしてぱたぱたと二つの足音が寝室へ消え、やれやれと剣城は溜息をつきました。

(土曜日までにこの課題、終わらせねーと……)

どうやら、お出かけを楽しみにしているのは、二人だけではないようです。



そして、待ちに待った日曜日。剣城お手製のお弁当を持って、近くの森へと遊びに行きます。

「ピクニックー、きょーうはたーのしーいピクニックー!」
「きょーすけもいーっしょのピークニックー!」
「おいお前らあんまり遠くへ行くなよ?」
「「はーい!」」

尻尾をぶんぶん振りながら野原へと駆けていく二人に、剣城はやれやれと仕方がなさそうに見守ります。

「あれ、これ何だろう?」
「…………わー!トカゲ!?」
「しっぽ切れたー!?」
「きょーすけくーん!!トカゲのしっぽ切れちゃったー!!」

わーんと泣きながら近寄ってくる二人に、「トカゲってそういうモンだ、気にするな」と剣城は返事しました。

「えっ、でも……」
「トカゲ、死んじゃわない?」
「大丈夫だ、生きてるから」
「………ホント?」
「ああ。だからんな泣きそうな顔をすんじゃねぇよ。男だろ?」
「………ん!」
「………うん!でもきょーすけすごいね、なんでも知ってるんだね!」

嬉しそうに抱きついてくる二人の頭を撫でながら、剣城は「まあな」と返しました。そして、「腹、減らねぇか?」と問いかけます。

「おなかへった!」
「ボクも!」
「そうかよ。んじゃ手伝え。ほらこれ敷いてくれ」
「「はーい!!」」

てんまとたいようの二人で、懸命にシートを広げ、地面に敷きます。風のせいで手こずりましたが、なんとか出来たようです。

「できたよ、きょーすけ」
「ああ、それじゃ食うか。ほら、靴脱いで上がれ、ちゃんとこれで手を拭けよ?」
「わかってるから!」
「と言いつつ拭かないだろうがお前ら!手ェ出せ、拭いてやる」
「むー、はやくたべたい!」
「はやくはやく!」
「………よし、食べていいぞ」
「わーい!」
「いただきますー!…………ん、おいふぃっ」
「やっぱりきょーすけのホットケーキはさいこうだね!ね、たいよう!」
「うん!」
「そりゃ良かった、まだあるからどんどん食ってけよ」
「「はーい!!」」

いい返事をし、次々お弁当を平らげていく。それを見ながら剣城も食べ始めました。



お昼ご飯も食べ終わり、三人は何をするでもなくそよそよと風に吹かれています。

「………おいしかったー………」
「こんどゆーいちおにーちゃんもよぼうね、きょーすけくん?」
「ああ、そうだな………」

フッ、と笑う剣城に二人とも顔を見合わせ、にこっと頷いて剣城に飛びつきました。

「うわ、何すんだお前ら!?」

慌てる剣城に、てんまは言います。

「きょーすけ、だーいすきっ!!」

ちゅっと頬にキスするてんまの反対側で、たいようはすりすり頬擦りをします。

「きょーすけくん、だいすきっ!」

そんな彼らに「………そうかよ」と照れたように言いつつ、ぎゅっと抱きしめた剣城でした。



剣城さんちのピクニック







『そらゆめ』の小柚様に贈らせて頂きます雨天京です。前に私が日記に垂れ流したわんこな雨天京で、との事だったので無邪気な天馬と太陽のわんこ兄弟と目いっぱい保護者な京介にしてみましたがどうでしょう………もはや別人だなこりゃ。←
太陽くんが京介の事を何と呼ぶのか今一つ分からなかったので、区別するという意味もありたいようは彼を「きょーすけくん」と呼んでます。……うん、誰だこれ。←

とりあえずこうなってしまいましたがよろしければ貰ってやって下さい小柚様!オマケの絵も(下手くそですが)もちろんお持ち帰り可能です!これからも毎日こっそりstkさせていただきますからね!←
それでは、相互ありがとうございました!

2012/03/13up




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