「剣城ー、好きだよ?」 天馬が急にそんな事を言ってきた。 「んだよ突然」 「んー、なんとなく?」 そしてにこにこしながらまた「つるぎ、だいすき!」と繰り返す天馬の頭を撫で、剣城は「ああ」と返した。 「ねーつるぎー」 「何だよ」 「大好きだよ!」 「……ああ」 いつも通り剣城が返事を返せば、天馬は一瞬どこか寂しそうな顔をした。 「剣城、」 「どうした」 「………、好き、だよ?」 「ああ」 そう言って天馬の頭をくしゃっと撫でれば、気づかない程短い時間暗い顔をしていた彼は、やっぱり嬉しそうな顔をした。 「…………ねぇ、剣城ってさ、」 「んだよ?」 唐突に、天馬が声を上げた。そちらの方を見やれば、彼は俯いている。その様子に、剣城は首を傾げた。 「剣城って、さ、…………俺の事、好きなの?」 「はあ?」 何を今更、怪訝な顔をした剣城は、とりあえず天馬の頭を上げさせようとする。しかし、剣城の白い手が茶色の髪の毛に触れる前に、ガバッと勢い良く顔を上げた。その目尻には、涙が光っている。 「剣城、本当は俺の事、好きでも何でもないんでしょ!」 「何言ってんだ、いつ俺がお前の事嫌いだなんて言ったんだよ!?」 「だってっ……!!いくら俺が『好き』って言っても、剣城は返してくれないし!いっつも『ああ』ってしか言わないし!俺、今までお前から『好き』って言われた事ないよ!!」 もう、俺ばっかり『好き』って言うのも疲れたよ。そう言って悲しそうな顔をして俯く天馬に、何も言えない。せめてその涙でも拭ってやろうと指を伸ばすと、パシッと撥ね除けられた。 「どうせ………、どうせ、お前は俺の事何とも思ってないんだろ!だったら何であの時、俺の告白に頷いたりしたんだよ!」 涙をぼろぼろ流しながら言う天馬。その全身が、剣城を拒絶している。そのまま、部内でもトップクラスに入る自慢の足の速さを活かして逃げ出そうとしたが、急に腕を引っ張られ、体勢を崩した。 「わわっ……!?」 ぽすっ、と埋まったのは剣城の胸。自分がどういう状況なのかを理解した天馬は、剣城の腕の中から逃れようと暴れ出した。 「やめろよ!放せ!」 「嫌だ!!」 「ーッ!!」 耳元で怒鳴られ、反射的に肩をすくめる。一瞬動かなくなった隙に、ますます固く天馬を抱きしめた。 「行くな!頼むから……っ………………俺は、お前が、天馬が好きだ!だから、行くな!」 「…………嘘、だろ」 「嘘じゃねぇよ!」 嘘だったら、こんな事しねぇよ。そう言って無理やり顔を合わせ、口付ける。そっと離した頃には、天馬の顔は茹で蛸の様に真っ赤になっていた。 「…………分かったかよ」 「…………うん、」 「……………………愛して、る」 「……………………うん!」 泣きながら笑う天馬はぎゅっと抱きしめ返して、剣城にキスを贈った。 『愛してる』って言えなくて ver.T (ふーん、それで天馬君怒ったのかい。それは自業自得だなぁ、京介。で、どうして今まで言わなかったんだい?) |