手術日がじわりじわりと近づいてきて許されたのは一時帰宅。容態は安定しているから無理をしなければと与えられた期間は3日間。正直一番驚いたのは僕自身だった。そんな話を一時帰宅直前に見舞いに来てくれた天馬としていたのだ。


「でも急に3日与えられたら何していいか分かんないよね」

「あはは!いいじゃん、家でゆっくりしてきなよ」

「うーん…でも3日も家に居るなんてあんまり無いから変に緊張するよ」

「そっ、か……」


自分としては当たり前の事だったから笑って言うと天馬の顔が少し曇る。言葉を探すような天馬にあ、なんか気を使わせちゃったかなと思考をそこからそらすようにを殊更明るい声で話を続けた。


「家に帰るのはさ2日くらいでいいんだ!あとの1日はそうだな……例えば天馬の家に泊まるとか!それって楽しそうだよね」

「…………うん」

「天馬?」

「泊まりにくる?」

「え」


冗談ではあったけど、本当にできたら楽しいだろうなと思いを馳せていた所のこのセリフ。この話は意外にも簡単に進んだ。
両親はお前が行きたいならいいんじゃないかと言ってくれたし、天馬がお世話になっている家は本来の自分の家より病院に近いということで許可が下りやすかったみたいだ。なにより管理人である天馬の親戚のお姉さんが、冬花さんと知り合いだった事も大きな要因の一つ。
そんなこんなで一時帰宅最終日。ころりと寝返りをうつとベッドを譲ってくれた天馬の寝顔が斜め下に見える。(ちなみにベッドを譲る遠慮するの大変な攻防戦があったこと記しておこう)
天馬の寝顔を見つめながら1日を振り返る。ああ本当に楽しかった。朝からずっと友達と遊んで、一緒にご飯を食べて、友達の家に泊まって1日を終えるだなんて生まれて初めてだった。これでサッカーが出来れば最高だったんだけどっていうのは内緒だ。あまりにも楽しくて帰りたくなくなっちゃったなんていうのも内緒。でも思わずぽつりと呟くくらい許されるかな。


「……やだなぁ」

「なにが?」

「天馬」


いつの間にかぱちりと開いていた天馬の目と視線がかち合った。起こしちゃったかなと謝ろうとしたが天馬はそれを察したようになんか寝れなくてとにこりと笑った。


「なにがやなの?」

「………今日が終わるのがやだなぁって」

「……なんで?」

「だって楽しかった、から」


頑張ると決めたけれど、手術もすると決めたけれど。次が来るなんて保証はどこにも。


「また泊まりに来ればいいじゃん」


さらりと。あまりにもさらりと言った天馬を目を点にして見つめる。天馬はそんな僕の顔を見てふっと笑う。


「今度泊まりに来るときはサッカーできるんだからもっと楽しいよ」


手術が成功するのはさも当たり前だと言わんばかりに続ける天馬に今度はこっちが吹き出す方だった。僕の心配なんて知った事ではないといい意味で一蹴されたような気がして。やっぱりすごいなぁ天馬は。


「…ねえ天馬お願いがあるんだけど」

「なに?」

「そっち行っていい?」


え、と天馬が聞き返す前にベッドから降りて天馬の布団に潜り込む。天馬は僕より体温が高いようで、そこはとても心地のいい温かさだった。


「たたた、太陽っ!」

「天馬あったかーい」


慌てる天馬にぎゅっと抱き着くとうぅと唸り声を出しながらも静かになっていく。やがてきゅっと小さくパジャマを握り返される感覚に顔が緩む。


「誰かと寝るなんて初めてだなぁ」

「そうなの?」

「うん、嬉しい」

「……じゃあ俺も嬉しい」


天馬がそう言ったあとしばらく生まれる間。なんだか気恥ずかしくてお互いにへへと笑いあう。


「じゃあ…おやすみ天馬」

「おやすみ太陽」


天馬を抱き締めたまま心地よい温かさに身を横たえながら目を閉じる。
初めて明日の朝が来ることを楽しみに思えた。





『そらゆめ』の小柚様から貰っちゃいました雨天ちゃんですうふふふ。京天もいいけどラブラブな雨天もいい……
太陽くんはおっぱい星人な変態でもオールオッケーなのですが、こんな一緒に布団の中で抱き合って微笑みながら寝ちゃうプラトニックさも大好きですっ(力説)
それでは小柚様、本当にありがとうございましたー。かわいすぎて禿げてます現在進行形で。←





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