「劇?」
「はい、劇というか、まあ、朗読会みたいなものですかね」
「……それを私達でやるのに一体何の意味があるのよ、シンさん…」
「店長ですってば……えーと、イメージ力を鍛えるため?ホラ、ヴァンガードファイトってイメージ力が大事ですし」
「それとこれとはカンケイなさそーな気がするけどなあ…」
「ま、まあともかくやってみましょうよ!」

そんな店長のよく分からない一言から全ては始まった。





「では、第一回イメージ力を鍛える会を始めます!!」
「第一回て…まさか次もあるのか…?」
「知るか」

ボソッと呟く三和と興味が無さそうな櫂。

「今回のテーマはズバリ、『悪い王様に攫われた姫を救う騎士』!!どうです、コレを決めるまで昨日の夜遅くまでかかったんですよ!」
「そんな事に時間をかける方がおかしいと思うッス……」
「この無能店長…」
はあ、と頭に手を当てて溜息をつくミサキ。しかし、そんな事はお構いなく話を進める店長である。

「とりあえずキャストを決めましょう、じゃあ……姫を救い出す騎士はアイチ君で」
「ええええ!?ぼ、僕ですか!?」

そんな、他にもっと似合う人はいるでしょう、た、例えば櫂くんとか!と慌てて抵抗を試みるが、

「アイツがそんなキャラに見えるか?」
「無理ッス、むしろアイチお兄さんの感覚が分かりません」

そうあっさり反論を封じられ、するっと決定した。

「それじゃ次に、攫われるお姫様は…勿論ミサキで」
「何で私なのよ」
「えー、それはホラ…花がありますし?」
「そんなもんアイチの方がスゲー似合うと思うけどなあ?」
「……」
「そうです!そっちの方がいいです!!」
「ええっ?でも…僕、男だよ?」
「そんなのカンケーないッス!!アイチお兄さんの方が…」
「もういいよ、私がやるから」
「な、なんかマ○オみてーだなー…」
「ああ、さしずめ騎士がマ○オで悪の王がク○パってとこだな」
「あ、マケミに井崎じゃん、よーしこうなりゃお前らも参加しろ!!」
「なああっ!?」

そんな風にもめながらも大体決まっていき、残りは悪のボスキャラのみとなった。

「なんだ悪の王って」
「あーそれはですねー、イメージ的に竜の王様です」
「え?竜ってことは…」
「ま、まさか…」
「ええ、櫂くんですねー」

それを聞いた途端、櫂の眉間に皺が寄った。それはそうだろう。誰だって自分が悪役にはなりたくない。

(ちょっ、店長櫂の奴に殺されるぞ!)
(あわわ、どうしましょう!?)
(いや、でも逆にピッタリじゃねーか?)
(ちょっ、森川くん!!)

不機嫌になってしまった櫂を一体どうなる事かと恐々見守っていると、意外にもすんなりと承諾した。


「ちなみに悪の竜王は、お姫様を妃にしようと攫った設定ですからね☆」

そのセリフによって、櫂の機嫌はさらに急降下した。

(店長死んだー!!!!)

櫂の内心をイメージしてしまい、心の中で悲鳴をあげた三和だった。






長いので二つに分割。

2011/08/08 up




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