「ルカ、」
「気安く触らないで、マスター」
「すまん」

ぱしっ、と伸ばした手を叩き落とされるなんてのは日常茶飯事で、もう諦めとる。一緒に暮らしはじめて一週間になるが、触れたのなんて、最初“ココ”にいる証明として触らせてもらったぐらい。パソコンから出てきた時は心臓が止まるかっちゅーくらい驚いて1時間はそこから動けんかった。その間いらいろ罵られたけど、それにすら快感を感じとった俺はもはや変態。ルカが現実にいるという興奮と見下すような視線を受ける快感とが入り混じって、動悸が止まらなかった。

「マスター」
「ん?」
「早く調教してちょうだい」
「おん」

やっぱり現実に出て来たからには、調教の仕方も違う。俺が作った楽譜を直々に渡し、それを人間と同じように歌わせる。ただ、それだけ。それはPCに楽譜を打ち込むより簡単で、ルカも喜んで歌うし俺も思い通りの歌が聴けるなんて、一石二鳥だと思わん?俺がベッドに寝転がり目を閉じて聴いていると、ふと、途中でルカの声が途切れた。途切れたっちゅーより、ノイズ混じりの声といったほうがええんやろか。今までそんな事がなかったから、驚いてルカを見ると、ルカの身体にも微かなノイズが混ざっていた。

「ど、したん?」
「もウ、帰らなキゃ…」
「え、」

ちょ、帰るってなんや。パソコンにか?そんなの嫌や。どうすれば帰らない、どうすればココにおれるん、とか聞き出そうとしたのをルカの手に塞がれた。もう半透明だ。信じられん、帰るなら、なんで出てきたんや。あかん、視界がぼやけてきたわ。

「マ…たー、…最後に、」
「…おん、」
「最後ニ、……めテ、」
「ルカっ…」

抱きしめて。
そう理解した時にはもうルカは居なくて、俺はルカの居た場所を抱きしめた。素直じゃなかった彼女の、最後のわがままを、叶えてやる事は出来たんやろか。




0815

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人外×四天宝寺様に提出


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