「オイ宇髄、名前知らねェか?」

「は?お前、聞いてねぇーの?」

「…なんの話だァ」


それは、名前が最終選別に行って4日が経った時だった。珍しい客が宇髄邸に来たかと思いきや、第一声が名前の事である。
不死川が焦っている姿を見ると、本当に何も知らないのだと悟った。


「それはタダでは教えてやれねぇーな」

「ふざけた事言ってんじゃねェよ」

「ふざけてねぇぞ、そうだなぁ…おはぎが食いたくなってきたなー買ってこいよ」

「あ゙?」

「いいのか?名前がいる場所は俺しか知らねぇぞ?」

「チッ…」


宇髄の言葉で不死川は一瞬にして姿を消した。不死川の気配が無くなった事を確認すると、宇髄は大声で笑い転げた。実に愉快である。
名前の事になると、宇髄が知っているあの不死川では無くなってしまう。あんな奴を変にしてしまう名前が凄いと、感心する彼であった。


……………………………………………


「ほらよクソが」


そう言って宇髄におはぎを渡す不死川。
あの後、10分弱で戻ってきたのだ。街までは30分以上かかるのに、買い物込め往復10分で帰ってくる不死川の身体能力は化け物である。流石に宇髄も目を疑ったが、しっかり包装されたおはぎを渡されたので、本当に買ってきたと信じるしか無かった。


「そんで、名前はどこだァ」

「はいはい、藤襲山だよ」

「…は?なんでそんな所いんだよ」

「本当…お前何も知らないんだな」


名前の話を一部始終話すと、額に血管が浮き出るほど不死川は怒っていた。
だから話したく無かった、とため息をつく宇髄。


「アイツ馬鹿なのか…?」

「馬鹿にも程があるぜ。ったく」

「説教だなァ…」


帰ってきたばかりの不死川が、すぐさま立ち上がり玄関へ向かった。指をゴキゴキと鳴らしながら草履を履く姿は、これから鬼を殺しに行くのでは無いかと勘違いする程である。


「は?お前、どこ行くんだよ」

「アイツの所だ」

「今からか!?」

「当たり前だァ…手間かけやがって」

「…派手にすげぇなお前」


そんな心配しなくとも柱である名前は大丈夫に決まっている。まぁでも、不死川の中では昔の弱い名前の顔がチラついているのだろう。


「過保護な野郎だぜ。おい、これ持ってけ」


不死川に向け、包みを投げた。
それは先程彼が10分で買ってきた、おはぎである。実は宇髄も何となくこの状況が見えた為、名前への手土産を不死川に買いに行かせたのだ。


「テメェそういう事かよ」

「まぁーな。色男はなんでも出来るんでな」

「気色悪いこと言うんじゃねェよ」

「素直にありがとう言えよ、歳上は敬え」

「チッ…礼を言うぜ」

「名前によろしく言っといてくれ」


そしてまた、一瞬で不死川は消えたのだった。
そのお陰で名前は、不死川から2発の説教をくらうことになる。




(頑張れ、名前)
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