綺麗な石ころに躓いた

こうなることは分かっていた。
今までにない例外を名前はしようとしているのだから。
でも、どこでバレてしまったんだろう。そもそも宇髄にしか話をしていないはずだが。と彼女は考えに考えていた。


「やぁ。待たせたね名前」

「…お館様…」


名前がいるこの場所は、鬼殺隊の本部。お館様こと産屋敷耀哉の屋敷である。
最終選別の日程の確認も取れ、いざもうすぐお忍びだというこのタイミングで産屋敷からの手紙が届いたのだ。
「上手く隠していたつもりだったのに、なにがダメだったのか」と彼女は頭を垂れたまま反省をしていた。


「早速だけど本題に入ろうか」

「はい」

「どういう事か説明してくれるかい?」

「承知致しました…あの…その前に何処からその情報を…」

「名前の可愛い鴉から」


やられた。あの裏切り者め。
横目で鎹鴉を見れば、鴉は焦った様に名前の前から去っていった。


「鴉は悪くないよ。きっと名前が危険な事をするかもしれないと心配しているんだ」


「これはもう腹を括るしかない」と名前は産屋敷に全てを話した。
柱合会議でしか、産屋敷の敷地には足を運ばない。報告は全て手紙や鎹鴉を通してだ。
左右にいつもならいる時透と煉獄が今日は居ないのだから何だかとても寂しく思えた。

全てを話し終えた名前は、産屋敷の顔色を伺った。これまた顔色ひとつ変えないポーカーフェイスの彼は、さすが鬼殺隊の先頭に立っているだけある。何も感情は読み取れない。


「話は分かったよ」

「お館様…私…」

「いいんじゃないかな。行っておいで」

「え?」

「確かに例外だけど、名前の気持ちは分かるよ。あくまで“見守る”だからね。甘やかさなければ名前の好きなようにやってごらん」

「お館様…!!」


まさかお許しを頂けるとは。
お館様の承諾があればなんだって怖くはない。
おかげで動きやすくなった。


「お館様に付いて来て正解でした。お館様大好きです!」

「ありがとう。最終選別は明後日だろう。家に帰って準備をするといいよ」

「はい!」


名前は産屋敷に一礼をし、その場を後にした。
誰もいない綺麗な庭園へと戻り、そこに残るのは産屋敷耀哉とその妻あまね。
彼は微笑みながら彼女に言った。


「あまね。私は当主になり沢山の子供たちを見てきたけど、名前みたいな子は初めてだよ」

「そうでございますね」

「彼女はなにか違うのかもしれないね」


彼の心地の良い声音が、また静かで綺麗な庭園へと響いたのだった。




綺麗な石ころに躓いた
(私の人生で初めての出来事だ)
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