〜♪
「あ、わりぃ。俺のだ」
「はいはい愛しのダーリンだろ」
毎日放課後になると来るメールは必ず俺のダーリンからのもの。
『先に帰ってろ』
またか…。
そっけないいつも通りの文体に、ため息をはいて返信をせずに携帯をポケットにしまう。
それを見ていた親友は、頭にクエスチョンマークを浮かべて聞いてきた。
「会長なんて?」
「昨日と同じ」
最初は俺だって律儀に返信はしていたさ。
けど、ある時からダーリンと共にうちの学校が変わってしまった。
転入生。
黒のモジャモジャに分厚い眼鏡。なのに声は大きく、一度喋った事のある相手なら次の日には親友のカテゴリーに入れる、という脳内お花畑のような男がここに転入してきたからだ。
一度見たことはあるけどアレは駄目だ。俺の苦手分野。
何が変わったかと言えば、生徒会が動かなくなった。
転入初日に副会長をおとし、次に会計、書記とまるで漫画を見ているかのように転入生は生徒会を誘惑していく。
そうなれば次々に仕事より転入生を優先としていく役員が増え、今じゃ俺のダーリンのみが生徒会を支えている。そう、俺のダーリンは清和学園の生徒会長、皆川時斗(みながわ ときと)だ。
数ヶ月前に同期生でもある会長に告白され、二つ返事でオッケー。
や、普通に俺も好きだったから。
お互い一歩一歩進んでいこう。
そんな会長の言葉に惚れ直したのはいつくらい前だったか。
今じゃ会えないし声も聞けない。
生徒会には会長しかいないから仕方ないとは思って俺も我が儘は言わないようにしていたけど。
「そういやうちの生徒会長、転入生といい感じらしいぜ?」
これはどういう事だ。