この高校に入ってもう1年、つまりもう2年生かとため息をはく。正直ここの学校の空気に慣れてきている自分が嫌だ。右向けばキスしていて左を向けば…………。


「んッ、ぁっん、だ、めぇッ」


言った矢先にこれかよ。げんなりと一気になんか生気的なのが抜けた。しかしまぁこーいうのは反応するだけ無駄だと分かってる俺は無表情でスルーを決め込もうと回れ右、をしたはずが目の前には白。

「ぶっ」
「あー?」

何か硬いものに鼻をぶつけた。しかも上から聞こえるのは荒い口調の声音。おそるおそると見上げれば綺麗に整ったイケメンが。


「んだよ……て、真じゃねぇか。自分から飛び込んで来るなんて積極的だなぁ」


黒髪で耳に光るピアス、着崩した制服の隙間から見えるネックレス。うえ、なぜ会うんだ。

「ひっ…!風紀、委員長…っ!」

因みに俺が言ったんじゃない。先ほどアンアン言わせていた男だ。

「風紀委員長サマ呼ばれてマス」
「なんか真痩せたか?」

頼むから日本語が通じてくれ。頼むから腰を撫でないでくれ。嫌がるように体を捻れば「感じてんのか」と耳元でエロスなボイス。感じてねぇよ。


「第一風紀委員長なんて言うな。斗真でいい」
「風紀委員長様で十分です」


や め て く れ 。
ただでさえ俺はあんたみたいなのと関わるのが嫌なんだ。この男――五味斗真はこの学園では有名な危険人物、風紀委員長様々である。この俺様何様風紀委員長様がキレれば一瞬にしてその場は戦場化、気に入らなければその場は戦場化。そんな男が色々とあり平凡で地味、無口を決め込む俺に好きと言ってくるようになったのは何故なのか。いや本当に何故。


「ちょっ、なに、しようと…っ」
「キス」
「さらっと気持ち悪い事言うな!」
「大丈夫だ、真なら出来る。あきらめんな」
「待っ、ほんとにやめっ」


抵抗しようにも体格が違う。しかも一つ上だし。ぐぎぎぎ、と効果音がつきそうなくらいコイツの顎を押すがなんて力だちくしょう。いつの間にか背中は壁についてしまって後ろにも下がれないし、あ、もうダメかも。


「上条、白石は?」


救世主は、いたようです。


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