「真、コーヒー」
「白石…こっち……」

「コーヒーは10秒前に入れました」
「仕事したらどうですか」


五味先輩は一応何かをしているようだが、机の上には白のマグカップがもう数十個ある。コーヒー飲みすぎだ。永田先輩はソファに寝転んで眠そうに祐一を手招きするが、先ほどにセクハラをしたせいか祐一は怖がって近づかない。つか俺に引っ付いている。

「今日なんてマシな方なんですよ。いつも机に向かうなんてあり得ないんですから」
「悠斗君」

にっこり笑う表情に幼さが残る彼は中村悠斗。俺より1つ下の1年生に関わらず風紀委員に所属している。といっても悠斗君は行動派ではなく風紀の頭脳だとか。

「風紀っていつもこんな感じなのか?」
「まぁ基本的には」
「へー」
「で、でも仕事はしますよ」
「どんな?」

風紀の仕事というか、五味先輩はいつも何をしているのかは前々から気になっていた。だから聞いてみれば考える素振りを見せる。
すると、その場で五味先輩の携帯がなった。

「あ、丁度いいタイミングですね」
「え?」
「五味さんの仕事、ちゃんと見てあげて下さいね」

永田さんの仕事も、と祐一にも笑いかけながら悠斗君は俺達から離れて一つの机に座り、小さなパソコンを開く。何事かと五味先輩を見れば携帯を耳に当てて会話をしている。永田先輩もいつの間にかソファから立ち上がってるし。

「よし、……あぁ、了解」
「斗真」
「ヤスだけで十分だろ。ただ人数が多いから気を付けろよ」
「ん、分かった。行ってくる」

ふぁ と欠伸をした永田先輩は背伸びをした後、呆然としている祐一に近付いてもう一度「行ってくる」と言いながら頬にキスをして部屋を出た。なんという流れ技、今誰も動けなかったぞ、おい。我に返った祐一が発狂するのを放っておいて俺は五味先輩に近寄る。

「何かあったんですか?」
「まぁな。事件っぽいかんじの」
「人数が多いって…。大丈夫なんですか?」
「まぁ見てなって」

そう言う先輩は少し楽しそうだから俺はこれ以上何も言わなかった。


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