「上条君」 「……はい」 「君が今踏んでいるモノは?」 「風紀委員長様の眼鏡です」 「俺が眼鏡をかけていた理由は?」 「コンタクトがないからです」 「うん、分かってるんだったらよかった」 ニッコリとキラキラした笑顔で五味先輩は俺の肩に手をおく。俺はというと冷や汗と必死な笑顔で多分表情はひどい。 「真にやってもらいてぇ事があんだよなぁ―…」 きっと時間のベクトルは五味先輩にとっていい方向で俺にとって悪い方向に進んでいるに違いない。 <> 「俺は関係ないから」 「裕一」 「知らん」 「頼む」 「頑張れ」 「裕一」 「嫌だ」 事の一連を話すと親友の裕一は無表情であっけなく言い放つ。お前は後ろが危険な親友を見逃すのか。 「なんでお前また自ら危険に飛び込むんだよ」 ごもっともです。 「俺のなにが悪いんだ…」 「授業中寝たからじゃね?」 「授業中寝たのは睡眠不足だ。睡眠不足になったのはお前が昨日俺の部屋に居座り漫画を長々と読んだからだ。よってお前の責任」 「……知らん」 「俺は寝たいって言ったのに寝かしてくれなかったのは誰だ?」 「……」 「はい決まり」 放課後に集合だってよ、と告げれば涙目で「覚えてろよ」と言ってきた。そんなに嫌か。まぁ俺もだけど。 放課後、担任が哀れんだ目で頑張れよと握手された。何、なんでクラスメイトもそんな目で見てくるんだ。 三階の奥、一際目立つ扉には風紀室と記されている。ブツブツと文句を言いながらも、ちゃんとついてきてくれる裕一には実のところ感謝はしていますよ。 「本当は来たくなかったんですがお邪魔します」 軽くノックをして悪意剥き出しで一言言えば間もなく扉は開いた。 「よぉハニー」 「はぁ…こんにちは」 「じゃあ早速今日からな」 「は?え?今日からってどういう事?え?」 そういえば裕一に言っていなかったな…とその時気付く。言ったら逃げるかもしれないって思ったからじゃないから、断じて。 「おい真」 「すみません…」 「で、俺は何をすればいいんだよ」 あー…と言葉を濁す俺に五味先輩は嬉しそうな顔で俺の後ろに視線を送り、口を開いた。 「風紀の仮補佐をしてもらうんだよ、なぁヤス?」 「ん…」 五味先輩のが呼んだので永田先輩が後ろにいるんだと気付く。すると直後に裕一の「ちょっ、はな…し、…ひっ」とまさにナニかをされてるような声が聞こえた。 |