「真君…、」
「ん?何、ゆかちゃん?」
「あたし…真君が…っ」
「え…」
「真君が…好「ぐおぉぉらぁあああ!!!上条起きろテメェ!!」

夕日を背にうるうるとした可愛いゆかちゃんはドスの効いた怒鳴り声と白い凶器によって消えていった。
先生、チョークが頭に刺さって痛いです。





結局ゆかちゃんは夢で、目を覚ませば男だらけの学園。しかも寝ていた授業は担任のものだからペナルティとして課題追加。授業後、裕一にドンマイと笑顔で言われ、俺は渋々ペナルティを貰いに職員室に向かった。

「あれ」
「あ、」
「どうも」

無言で頭を下げたのは風紀の副委員長である永田先輩で職員室の壁にもたれかかっている。

「何やってんスか?」
「斗真待ってる」
「五味先輩が職員室って」
「風紀の仕事」

あ、そういやあの人風紀委員長だった。

「あれ……?」
「?」
「なんかあの人顔についてますよ」
「……眼鏡だろ」

一瞬きょとんとした顔をしたが永田先輩はすぐに俺がさすモノを言う。いや眼鏡だけど、分かってるんだけど。

「いつもつけてないのになんで」
「いつもはコンタクトなんだよハニー」
「あ、永田先輩俺帰りますんで、じゃっ」
「帰らせません」

ガッツリ抱き締めんな。俺だって一応背は高いんだぞ。五味先輩が無駄に高いだけなんだぞ。

「真、何しに来たんだよ?」
「断じて貴方に会いに来たわけじゃありませんから悪しからず」
「でも俺の眼鏡姿が気になってたくせによ」
「…………んな馬鹿な」
「…聞かれてた」
「ちょっと待て永田先輩、なんで言わなかったんですか」

気付いてたなら言えよ。いや確かに気にはなったが好意とか ではなくて!!

「もう離してくださ…っ」

無意識にいつものように離れようと抵抗するため身体を捻り右手を振り上げれた。
けど今日はいつも通りじゃなくて。

「あ…」
「……」
「ってぇー」

カシャリ と床に落ちる眼鏡。
それは床というより俺の足元に近い、から。

 グシャッ


「あ…………」


俺の右足は不幸にも五味先輩の眼鏡を踏んづけてしまった。




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