なんで、 「こうなるんだああああ」 「うっさい勇馬、早く室内に入ろうよ」 「雨ってなんだよ!」 「天気予報で70%だから心配してたけど、やっぱ降ったね」 「その笑顔やめろ、腹立つ!」 今日は恒例の寮行事らしいのだが、生憎の大雨、土砂降り。花火は中止、肝試しも中止で結局何もなくなってしまった。しゃがみこんで地面にのの字を書いていれば後ろから伊東さんに背中を蹴られて泥の中に突入する。 「何するんですか!」 「おら、急遽予定変更だ。肝試し、やるぞ」 「へ?」と全員一致の返事が返る。外は雨、なのにどこで?と伊東さんに問えばニヤリと悪い笑みを浮かべて言った。 「校舎内なら大丈夫だろうが」 外より幾分ひんやりとする校舎内は半袖でも寒いくらいだった。あの後泥を洗い、スッキリとした俺は伊東さんに懐中電灯と会計ちゃんを渡されて、「幽霊役な」と校舎に行くよう命令された。そして今、現在進行形で俺達は待機場所の実験室でホルモン漬けされている生き物の下でしゃがみこんでいる。そので数分待っているのだが雨の寒さに思わずぶるりと震えたら隣で大きく肩を揺らす一人。 「な、なんだよ、なに、な」 「あ、すみません」 「すみませんってべべ、別に何も怖くねぇし、ゆゆうれいとか、別に」 「…………」 「な、なんだよ…」 「直先輩幽霊苦手ですか?」 「は、はぁ?何言って」 「あ、大丈夫ならいいです。じゃあ俺あっちで待機しますから」 「いやちょっと待て!」 いそいそと会計ちゃんから離れようとすれば服の裾を掴まれた。何ですか?と笑顔で言えばぐっと押し黙る。数秒の沈黙後、ピチョンと水道の溜まった水滴が垂れた。そんなベタな事でさえ会計ちゃんはビクッと跳ねる。つまりは幽霊が苦手なようです。 「あ、のさ、あのさ、」 「はい」 「頼むから、あのさ、俺から…離れないでほしい…」 「…………」 予想外、ちくしょう。幽霊が苦手と言えばいいものの離れないでほしいなんて。きゅんと射ぬかれた俺は思わずギュッと会計ちゃんを抱き締める。 「意地悪してごめんなさい」 「ん…」 そう言えばホッとしたように会計ちゃんの体から力が抜けた。そっと体を少し離して顔をジッと見詰める。恥ずかしそうに視線をさ迷わしたのを見て優しく頬にキスを落とす。目を閉じて下さい、と囁くように言えばおそるおそるといったように瞼が落ちた。見計らったように唇を合わせ、片手を会計ちゃんの後頭部に持っていき空いてる片手は腰を抱き寄せる。 「ん、」 緊張のためか、瞳だけでなく唇までがっちりと閉じられている。舌先で唇をつつけば意味を悟ったのか唇は隙間を作った。遠慮なしに舌を入れて会計ちゃんのに触れる。柔らかい粘膜が擦れる感覚に慣れているはずが、自身にも快感を生み出す。 (会計ちゃんのだと思うだけでこんな、止まら、ない) 抑えろと考えながらも会計ちゃんの腰に触れている自分の手がそういう意味を含めた触り方で嫌気がさす。思わず服の中に手を侵入させた時 ――…RRRR 「っ!」 「…っ!!」 高い機械音、ビックリして会計ちゃんが俺の肩を押して体が離れた。息が乱れた状態でお互いの顔を見る。 「携帯、だな」 「携帯…ですね」 どうやら俺の携帯が空気を読めない機械音を鳴らしたらしく、ポケットの中で振動していた。取り出せばディスプレイに「伊東さん」の文字。 「もしもし」 『あ、高橋か?ヤバイことになってな、見回りのやつが今いるらしいから見つからないように寮へ帰ってこい』 「は?了解とかとってたんじゃ」 『とってねぇよ。つまりはそういう事だ。じゃあな』 一方的な会話、いやむしろ会話になってない。とりあえず寮へ帰るため携帯をしまい会計ちゃんへこの事を伝えるためにため息をはいた。 |