目が覚めた。まだ少し寒い今の季節、暖かくなっている布団がすごく恋しい。出たくないと掛布団を引っ張るが逆に引っ張られている状態で中々引き出せない。こうなったら強行手段だと思いっきり引っ張られば予想外に出てきたのは上半身裸の会長さんだった。


頭が混乱して冷や汗が大量に溢れ出る。あ、その、何この状況。見れば自分もパンツ一丁じゃないか。とりあえずズボンを着ようとベッドから出る、が何かおかしい。
何がって腰が。

「…なんで腰が痛いんだろう?」

誰か答えてくれ。落ち着け俺、とりあえず思い出すんだ。昨夜、何があったのか。確か昨日会計ちゃんと俺の部屋でイチャイチャしてたら会長と澄が俺の部屋にきて、お祝いという名の冷やかしが始まった。で、土産と渡されたコンビニ袋を渡されて、そんで入っていたジュースを飲んで―――で?ジュース?
部屋を見渡せば昨日の状態のままのか、テーブルの上には空き缶があった。それをじっと見つめてればジワジワと思い出す記憶。そうだ、確か――。





「んで?何?どっちから?」
「お前は人の恋愛を聞く女子か」
「僕達の可愛い可愛い直が勇馬みたいな下半身馬鹿にとられたとあればね」
「なんか俺誰にも構わず襲うレイプ魔だと勘違いされそうなんだが」
「いやでも転校初日に密室のエレベーターで嫌がる純粋な青年を襲うのはレイプじゃないかな?」
「すみませんでした」

まぁおめでとう、とコップを渡され一応祝福の言葉は貰う。会計ちゃんは会長に何か嬉しそうに話しているが気にくわない。そんな俺の様子を見ていた澄はニヤニヤと嬉しそうな顔で悪魔のように囁く。

「会長と直って仲いいよね」
「……」
「この前とか生徒会室で居眠りしちゃった直が会長に抱き着いてたし」
「………」

俺って以外と心が折れやすいんですが。もう泣きそうなんですが。

「まぁまぁとりあえず落ち着いて」
「お前が言い出したんだ…っ、ろ?」

差し出される爽健○茶を受け取り涙目で澄を睨んだ時、背中にある衝撃、首に回られている腕。
肩に乗っている頭。銀色の。

「か、会長…さん?」
「…………」

なぜか生徒会長様が俺を後ろから抱き締めている。いや、え、意味が分からない。名前を呼んでみても反応なし。澄も珍しくビックリしてるようで、俺と会長を凝視している。

「会長、大丈夫で――」

頭をあげた会長に労りの言葉を与える俺の行動は何一つ間違ってなかったはずだ。
でもなんで、会長にキスされているんですか?

「んっ…」
「高橋…」
「はぁ!?ちょっ、何して…っ」

るんだ、と言う前に腰に鋭い痛み。見ればなぜか会計ちゃんに蹴られてた。

「高橋の浮気者!」
「ちょっ違っ…!ああぁっ、会長さん何俺の服脱がそうとしてるんですか!!つかなんでこうなった!!」
「高橋!!!!」
「ふむ、どうやら会長はジュースと間違えてお酒を飲んでしまったようだね。なんてベタな」
「何悠長に解説してんだ。なんで酒なんかあるんだ!!」
「ちょっと伊東さんのを盗んで入れておいたんだ」
「原因はお前か!!そして会長、落ち着いて!!」

脱がそうとする手を抑えればムッと口を尖らして拗ねる。ちょっ、ちょっと可愛いとか思ってない、断じて。

「なら、いい…。脱ぐ」

脱ぐ?何を?
なんて馬鹿なボケはいらない。会長はいきなりカッターシャツのボタンを外し肩をむき出しにして再度俺に抱き着いてきた。健康的な肌に思わず喉がなるが頭を振り切って冷静になる。とりあえず離してほしいと腕を掴めば後ろに体が傾き、倒れる会長さん。頭を庇うよう後頭部に手を添えればなんて見事な押し倒し状態。

「あ、いや、会計ちゃん?違う、これは違うんです」
「高橋の、馬鹿野郎…っ!!」

ゴキリッと嫌な音。視界がブラックアウトする前に見える姿に納得する。

(直さん…、中身がある一リットルのペットボトルって、意外と痛いんです、よ……)







あぁなるほど理解した。多分会長さんは寝てしまって、おそらく一緒のベッドと服は澄が嫌がらせとしてやったんだろう。解決してよかった。

「…………」

全然よくねぇえええ!!!


その後、相当頭にきてる会計ちゃんに土下座をする高橋勇馬の姿を目撃してる人は多かったという。

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