部屋から出て瀬波から貰った包み紙、「一応薬は入れてないから」と言われたが少し怖い。そのままもみじ寮を出て欠伸をしながら学校への道のりを歩けば同クラスの子とか見知らぬ可愛い子からも包み紙。


「今日なんかあんの?」
「勇馬気付いてないの?」
「へ?」
「今日バレンタインだからだよ」
「あぁ、バレンタイン…」


バ レ ン タ イ ン !?


「つまりこれらは…」
「まぁ男子校だし恋心を持って渡した子もいるかもね。あ、俺のは違うから」
「マジでか」


正直えっちな事も好きだが甘いもんも大好きだ。貰って嬉しくないわけないじゃないか。によによと眠気が吹っ飛んだ顔を緩ましてチョコレートを鞄に詰め込む。


「勇馬って1年のくせに背も高いし顔もいいから意外とモテるんだよ」
「何それ超嬉しい」
「この絶倫馬鹿」
「こら、馬鹿は認めるけどそんなエロい事を言わないの」
「馬鹿は認めるんだ…」


教室に入って机を見れば漫画みたいに積み上がって、はいなかった。二個くらいはあったけど。


今日は珍しく授業中は目が覚めていた。だからと言って授業を聞いているかと聞かれたら言葉を濁すしかない。


「瀬波ちゃーん、食堂行こうぜ」
「あぁごめん、今日は無理」


にっこりと笑う瀬波に捕まれている人を見て納得。人の恋路を邪魔したやつは馬に蹴られるらしいから邪魔はしない。
一人で寂しいが食堂にいって狐うどんを頼む。空いてる席はないかと見渡せばカップル祭り。食堂の人に哀れみを込めてチ○ルチョコを渡された。そんな目で見るな。一応俺チョコレート貰ったからね!


「あれ?」


食堂の端、チョコレートの山。その中に短髪の彼。


「おやおや?」
「っ!」
「澄と如月先輩じゃないスか」


珍しいコンビなのかなんなのか、しかも会計ちゃん狐うどん食べてるし。以心伝心だね、なんつって。


「じゃあ僕はここで…」
「ちょっ、無理ですって!」
「え、何?どしたの」
「パッとやっちゃいなよ」
「そ、んな簡単に…」
「じゃ勇馬、後はよろしく」
「待っ、澄さん!」


話は流れに流れて会計ちゃんと二人きりに。いや嬉しいけど何がなんだか。


「先輩?」
「なっ、なな…何」


あきらかに動揺した様子。とりあえず狐うどんを机に置いて会計ちゃんの頬に触る。赤い。


「なんか顔赤いですよ?」
「ちょっ、」
「大丈夫ですか?」
「なんもねぇよっ、あ、あのさっ」
「ん?なんですか?」


食堂の端だからと調子に乗った俺はちょっと、いや本当にちょっと抱き寄せたらバゴッと頬に衝撃、暗くなる視界。えっ、なに、痛い。


「も、今日は俺に話しかけんな!」


そのままバタバタと走り去って行く音。焦って周りを見渡すがどこにもいない。あの子逃げ足速いよね。


「にしてもコレって…」


紙袋に入ったシンプルな箱。もしやと心臓を高鳴らせ俺はその箱を開けた、が。


「……」
「義理って書いてある」
「……」

いつの間にか後ろにいた会長の言った通り、でかでかと「義理」って書いてあった。

え、喜んで、いい、のか。

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