悪魔様の暇つぶし

ファンタジー/悪魔×人間/ギャグ




今日の悪魔様は不機嫌だ。

「暇だ」

どんっと机に足を置いて呟く悪魔。その呟きは何度言っているのか、反応するのもめんどくさいので無視。

「暇だ」
「……」
「おい長谷川」
「はい」
「暇だ」
「……」

だからなんだ。今さら睨まれても慣れたというか怖くない。そのまま無視してやれば舌打ちが聞こえた。意識を目の前のパソコンに集中させてその他は空気と自分に言い聞かせる。空気だ空気。酸素と二酸化炭素と窒素の塊だ。中学時代に習った丸い塊を頭に思い浮かべる。すると酸素と二酸化炭素と窒素の塊がそろりとシャツの中に手を突っ込んできた。

「っ!ちょっ…何して…っ」
「んー、充電?」
「充電じゃねぇよ!それはれっきとしたセクハラだぁぁああああ!!」







俺の雇い主は悪魔だ。渡辺真人というシンプルな名前だが悪魔だ。だからといって角が生えてるとか、世界征服だとかそんな思考はしていらいらしい。証拠に俺の勤務先の「ワタナベ探偵事務所」なんてネーミングセンス皆無な探偵事務所、相談所。社長は悪魔助手が俺、社員募集中です。外見は人間で黒髪で耳下あたりまでの長さ。耳にはシンプルなピアスが左右に一つずつ。切れ目で俺様。なんか魔力(笑)みたいなのも使えるらしいが見たことはない。んで、そんな悪魔の被害者は俺こと長谷川拓磨はその悪魔の主食となってしまった。
人間が餓死してしまうように、悪魔も食べなければ餓死してしまうらしい。何の縁だか俺がその食べ物に最適らしく、毎日毎日俺の中の何かが失われている。フェロモンだか精気だか知らないが摂取法が気にくわない。

「長谷川、」
「は、い……んっ」

チュッと可愛らしいリップ音がしたと同時に唇は深く合わさる。あ、くそ…、気を抜いていた…っ!

「んっ、ふ…んんっ」
「っ……ん、ごちそうさん」
「ふ、ふざけ…っ!」

ふるふると震える手の甲で唇を拭いながら睨み付けるが、ニヤニヤと笑うこの悪魔には嬉しくさせるみたいだった。

そんな悪魔と人間の俺との関係性が"恋人未満、友達以上"のランクにいるのがまた気にくわない。


「あ、の―…」

おずおずと言いにくそうに声をかけてきたお客さんに俺は悪魔を殴り飛ばした。

「いらっしゃいませ!!」




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ファンタジーとかやってみたかった!! 悪魔×人間!!



2011/04/29 22:55
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