生徒会長のヘタレ事情

(風紀委員長と生徒会長)




「あのっ、これ…」
「いらねぇ」
「すみま、せん…」

あぁどうしよう、また泣かせてしまった。ごめんなさい、でも大丈夫。君ならもっといい子がいるから。そんな可愛い顔してるんだから。
今日もまた"会長"という仮面をつけるのか。


正直言って俺はヘタレだ。
告白されたらガラにもなくドキドキするし渡された手紙は一枚一枚保管したい。直接渡されたものは破り捨ててしまうけど間接的に貰った手紙はキチンと保管している。外見は黒髪で鋭い瞳。目付きが悪いし背も高め。生徒会長という学校の象徴と言ってみてもよい位置にいる俺は下手な真似は出来ない。
走り去ってしまった少年はその場に手紙を置いていってしまったのでちゃんと拾う。緊張していたのか少し皺がついている。

「相変わらずひでぇな」
「あ…」

後ろから声をかけられて振り返れば不快に顔を歪ませた風紀委員長様がいた。何かと俺につっかかってくる奴で俺よりも背が高い。しかも怖い。睨まれると泣きそうになる。

「テメェに関係ねぇだろ」
「いつかお前のスカした顔面を殴ってやりたいぜ」「はっ、やってみろよ」

やらないでください。俺ってそんなにスカした顔してるのかな。あ、なんか泣きそう。

「今日という今日は許せねぇなおい」
「昨日許せたんなら今日も我慢しろよ、単細胞」
「チッ」

舌打ちが聞こえたと思った瞬間、頬に重くて痛い拳がめり込んで俺は一瞬にして意識をとばした。




目を覚ませば白だった。あれ俺死んだ?、と思ったが学校の保健室に寝かされていたらしい。体は動くみたいで上体を起こせば頬に痛みが走る。

「ぁっ、いた…っ」

人生で一度も経験した事がない痛みにポロポロと涙が流れる。なんでこんな事になったのかを思い出して自業自得だと理解した。ぐい と袖で涙を拭った時目の前のしきりが開く。

「おい大丈夫…か…、え?」
「あっ、ちょっ…」
「え?もしかして泣いてんのか?」
「も、こっち来んな…っ!ふ、ぅ…」
「おいどうしたんだよ?落ち着け、な?」

顔を出したのは仲の悪いはずの風紀委員長で泣いている俺に焦った声で背中までさすってくる。俺は俺でパニックになって溢れる涙を止められない。結局泣き止むまで風紀委員長様は背中をさすってくれた。

「大丈夫か?」
「あ、う…ん」
「で、どういう事だ?これは」
「えー、とですね」

やっぱり聞いてきたかと冷や汗が頬を伝う。つか腕を組んでそんな眉にシワを寄せないで怖い。

「あ、あのさ…俺ってあの、本当はあんなキャラじゃなくて…」
「は?いつも俺の事馬鹿にしてたのにか?」
「うっうん…それについてはいつも後悔してるし、お前を目の前にするといつも怖いし…。告白だってラブレターだって保管してるし」
「は、ぁ?なんでそんな事…」
「だっと生徒会長だし…、こんなヘタレじゃ駄目だと思って」

腰まである掛布団を引き上げて顔を埋める。あーなんか恥ずかしくなってきた。

「ふーん、て事は俺とかにバレるとやべぇだろ」
「うん…そうなんだけど」

チラリと横目で風紀委員長様を見れば目が合ってしまって思わず反らす。

「まぁ黙っておいてやる」
「ほっ、本当!?」
「条件をお前がのめばな?」
「条件?何々、教えて!」

意外と優しい風紀委員長様はニヤニヤと笑いながらこっちを見る。俺は嬉しくなって身を乗り出す。


「俺以外にはソレを見せない事。二人きりの時は無理してキャラ作るな」


なんだ それくらい、と頷けば満足そうに笑う風紀委員長様。
それから3日後にはキスをされて、2週間後には恋人になっているなんて知るよしはなかった。





‐‐‐‐‐‐‐‐
なんか上手くいかん…



2011/05/08 00:03
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