佐藤君と田中君 2

「どうしたの?」
「いや別に何も…」
「そう」


佐藤はニッコリとキラキラした笑顔でまた前へ視線を向ける。整った佐藤の横顔を見ながら、前で委員会がどうたらこうたらと話す教師の話に耳を傾けた。


 委員会の一人がいないから手伝ってほしいと頼んできたのは佐藤だ。帰る気満々だった俺は嫌だと表情に表しても佐藤は笑顔を浮かべたまま。


「手伝ってほしいんだ、手伝ってよ、手伝え、な?」


普段の佐藤は真逆な口調にひきつりながら了解サインを出してしまった俺も俺だが。因みに佐藤とは恋人同士でもある。なんの運命だか知らないが、眉目秀麗、人脈豊富な佐藤に告白をされ、しまいには「断った場合今すぐ犯す」とアイツは言い放った。即座に前者を選び、俺こと田中は佐藤の恋人となりました。


「今日、僕と帰ってくれる?」
「んー、まぁ…いいけど」
「ありがとう」


その笑顔やめろ怖い。


外がすっかりオレンジに染まった頃に委員会は終わった。途中から寝ていた俺は佐藤に肩を揺さぶられて目を覚ます。


「田中君、帰ろうか」
「あぁ…」


鞄をひっつかんで佐藤の後ろを着いていく。会議室を出たら佐藤はピタリと立ち止まる。背中に鼻をぶつけた俺は佐藤の横から顔を出した。


「田中ちん、委員会終わったー?」
「神崎っ」


会議室の前でしゃがんでいたなは親友の神崎。見た目は金髪で肩につかない程度の長さだが、金色から覗く耳には銀色のピアスが数個。しかし、容姿からは想像がつかないほどに中身は弱く、童貞である。


「何してんだよこんなとこで」
「田中ちん待ってたんだ、け…ど」
「んーわりぃ、今日佐藤と帰る事になってさ」
「あ―…、そすか」
「わり、…って、引っ張んなよ佐藤!あ、じゃあなっ」
「……じゃあな〜」


ぽつんと残された神崎は先ほどの佐藤を思い出し、ぶるりと肩を震わす。


「人の恋路を邪魔するやつは馬に蹴られて死ねってか…」


一人ポツリと呟いて佐藤達と逆方向に歩き出した。


校門を出ても早歩きな佐藤に困惑する。手もまだ引かれたままで着いていくのが必死だ。


「な、ぁ…佐藤っ、どうしたんだよ…っ!」
「……」
「佐藤!」


無視された事にムッとして手を振り払いながら名前を強く呼ぶ。佐藤はピタリと足を止めたままこちらを振り向かない。


「佐藤…?」
「あのさ、」
「うん…」
「今日俺の家に来いよ」
「…………は?」


やっと振り向いた佐藤の表情は夕日で反射してうかがえなかったが、佐藤が言った意味を理解した後俺の表情は真っ赤に変わった。






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続いてみたりする



2011/03/20 22:38
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