レイトショウ おまけ

【おまけ】

「くっそぉ、慣れねぇ仕事で肩バッキバキだぜぇ!」

 映画館の裏口から出てきたグルグルは肩を回しながら帰路につく。

「上品ぶるのは大変だが割の良いバイトだったなァー! こんだけもらえりゃ……ヒヒッ、たまにはコック以外の仕事も悪かねぇ!! ヒャッホーォウ!!」

 茶封筒に入った札を数えるグルグルの服がオレンジ色からショッキングピンクへと変化していく。給料を貰ったときの胸の高鳴りというのは人間であろうとマモノであろうと関係ない。世界共通だ。

「さァさァ、薔薇園にカツアゲされちまう前にパーッと使っちまおう! 貯金なんてしたって、どうせ根こそぎ掻っ攫われるのがオチだもんなっ!」
「グルグルちゃーん」

 グルグルの目前を銀の線が通り抜ける。壁にナイフが突き刺さっていた。それに気を取られた瞬間、給料袋が手首に奪われた。

「ゲッ?! 薔薇園!!」
「キャハハッ!! ヤッバーイ! グルグルちゃんのくせに超お金持ちじゃん?」
「そ、それはダメだ!」
「勿論もらって良いんだよねぇー? くれるんだよねぇー?」
「何言ってんだよォ?! それは俺が汗水垂らして稼いだ――!」
「グルグルちゃんのものは薔薇園のものぉー。
 だーよーねっ?」
「……はい」

 首元にナイフを押しつけられたグルグルが涙を飲む。弱肉強食もまた世界共通なのだった。

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