レイトショウ 6

「ななっ何するんですか?!」
「良かった〜ゼロさんも私と同じだったのね」
「……何がです?」
「ドキドキしてる」

 美夜がニヤリと笑う。今度はゼロが顔を赤くする番だった。

「それは……! 驚いたからですよ。急に触られたから」
「違うって言ってよ〜! 私一人だけがドキドキしてるなんて悔しいじゃない」
「悔しがらなくても良いですって!」
「…………チケット、無駄にしちゃったね」
「お願いですから謝らないで下さい」
「……なんで分かるの?」
「いつも一緒ですから!」

 すっかり元の表情に戻ってしまったゼロに、美夜が困ったように笑う。

「ねぇ、今日が終わるまで一緒にいるって約束したよね?」
「そうですね」
「覚悟してね」
「何をです?」
「意地でもドキドキさせてやるんだから〜!
 お化け屋敷とかないかな?」
「そっちのドキドキですか?!」

 言いながらも、エサを目の前にして「待て」を言われた犬のような残酷な仕打ちは避けられそうで安心した。

「行きましょ!」
「はい」

 ムスクの匂いのような雰囲気に浸るよりも、よっぽど自分たちらしい。
 スクリーンよりも鮮明な青い月の下で、王とシエラザードの結末よりも気になるレイトショウがもう始まっている。

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