ハッピーバレンタイン! 4

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「ハッピーバレンタイン!」

 美夜とイチゴが包みを三人に手渡した。

「ありがとうございます! 綺麗なラッピングですね、開けるのが楽しみだ」

 さすがのゼロはラッピングを褒めることも忘れない。美夜と二人、会話をしている。

「ありがとな!」

 ジャンはイチゴから受け取ると、それを開ける前に、シュクルの背中を押した。

「良かったなァ、シュクル! お前のは特別大量だぞ、食べ過ぎて鼻血出るかもなぁ、ダーッハッハッハ!!」

 シュクルはおどおどとイチゴを見る。チョコレートは欲しいが、いつもキツいことばかり言ってくるイチゴから貰うのに、少し戸惑っているようだ。

「毒なんか入ってないんだから、さっさと受け取りなさいよー!」
「わ、分かった……ありがとう」

 シュクルが大きな包みを受け取る。

「言っておくけど、あんたのために作ったんじゃないんだからね!」

 ピンク色の顔をしたイチゴの言葉は、もうシュクルには届いていなかった。
 シュクルは包みを颯爽と開くと、中から一つトリュフを取り出した。それを目の前に持って来て、じっと見ている。
 イチゴはどきどきしながらそれを見ていた。

「きれいな丸……」

 シュクルが呟いた。
 途端にイチゴの顔がほころぶ。ジャンがウインクをしてきた。

『実はなぁ、イチゴ。トリュフっていうのは、片手で丸めた方がきれいに成形できるんだぞ』

 昨夜、ジャンが教えてくれたことだった。
 彼は特別体温が高いため、この工程でいつも失敗していたらしい。
 温かい両手で丸めていると、ガナッシュが溶けて、逆に形が崩れてしまう。だから氷水に浸けて冷やした片手を使って、バットの上で転がすことにした。そうしたところ、急に上手く作れるようになったのだと。
 もちろんイチゴの体温は氷水で冷やすほどではなかったが、ジャンのアドバイスは確実に役に立った。片手で転がすと上手くいく――彼が言ったことは本当だったのだ。

「いただきます」

 シュクルがトリュフをひと口で食べる。
 イチゴはのどを鳴らした。いつもは味見係だったから分からなかった。
 たった一つの、小さなお菓子の感想を待つことが、こんなにも緊張するなんて。 
 一生懸命作った分、余計にどきどきする。いつも美味しいジャンのお菓子ばかり食べて、舌が肥えているシュクルだ。微妙な顔をされたらどうしよう。
 シュクルが、はにかんだ。

「とっても、美味しい」

 その言葉が欲しかったの。
 イチゴは「当たり前じゃない!」と、誇らしげに胸を張った。

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