悪戯と報償 8

「待って!」

 思わず美夜が叫ぶと、光はどこかへと消えて行ってしまった。せっかく見つけた光を逃がしたくはない――二人は暗闇の中を駆け、光の消えた地点へと辿りついた。
 そこはバーだった。

「ここ……ジャンさんと約束したバーだわ……!」
「ほんとっ?!」

 ジャンという名前を聞いてイチゴが声を上げる。

「入ってみましょ!」
「う、うん」

 ギイ……と立てつけの悪い音を立ててドアが開く。やはり、あのオレンジ色の光がいた。姿は見えないが、誰かがそこにいる気配がする。

「もしかしてあなたも、あのミスターっていう人に……?」
「ミスター?」

 低い男の声だった。

「知らんな。そげなことよりも、なしてお前さんたちみたいなんが、こげな所におるんじゃろうかのう?」
「こ、コゲ……?」
「まあえぇ。今日はハロウィンじゃけ、どいつかに唆されたのじゃろう。けぇり道は分かるかの?」
「帰り道? やっぱりここは、私たちがいた街とは違うところなのね……」
「どうすれば帰れるのか教えなさいよ!」
「それを食べんさい」

 闇の中から浅黒い手が伸びて鬼灯を指した。そういえば段々灯が弱くなって来ているような気がする。

「あんたねぇ、あたしたちにこれを食べろっていうの?! あんな怪しい奴から貰ったものを?!」
「そ、それに中で火が……」
「じゃかましいわ。けぇれなくなってもえぇんか? 仕事を増やすでねぇ。ワシじゃて暇じゃないけん、はよせぇ!」
「こんなところに一人いてどこが『暇じゃない』のよ?!」
「今勝負中なんじゃて! 全く手の掛る奴らじゃ……」

 次の瞬間、むしり取られた鬼灯が二人の口に押し込まれた。驚いた拍子に飲み込んでしまったそれを味わう暇もなく、次の瞬間にはむせ返って咳き込みながら起き上った。

「おおッ起きたぞ! でぇじょうぶかッ?!」

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