悪戯と報償 5

 突然の言葉に美夜とイチゴは固まった。お菓子をせびる立場から一転、今度はせびられる立場になってしまったのだ。見開かれた瞳孔の小さい目が、警告灯のように二人の目に焼き付く。ジョークには思えなかった。きっと彼の言うとおり、彼を満足させるようなお菓子を渡さなければ悪戯されてしまうだろう。それが子どもらしい悪戯だったら良いのだが――。

「……ないの?」
「あ、あるわよっ!」

 弾かれたようにイチゴが何かを差し出す。「子どもからお菓子を巻き上げるなんて根性曲がってるんじゃないの?!」と心の中で悪態をつきながら。

「で、キミは……?」
「これをあげるわ」

 美夜も何か差し出す。珍しく声のトーンにトゲがあるような気がするのは、自分のではなく、イチゴの分のお菓子を巻き上げようとするミスターへの怒りからだろう。

「そこからじゃア、届かないよねェ……?」

 ミスターは黒く塗られた爪で引っ掻くように二人を手招きする。美夜とイチゴは彼の元に歩み寄り、それぞれお菓子を手渡した。

「……二人とも、同じお菓子?」
「えっ?」

 言われて初めて気が付く。相談したわけでもないのに、二人は大量のお菓子の中から、全く同じお菓子を選んでミスターに渡していたのだった。険悪な雰囲気を破るように、二人から笑みが零れる。だってそれは――。

「ジャンパルダフラのお菓子だね……?」
「えっ?! もしかしてあんた」
「ジャンさんを知ってるの?!」
「もちろん」

 ミスターがくつくつと喉を鳴らして笑う。

「……さァて、このお菓子は、食べたらどうなるのかなァ……?」

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