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「例の運び屋、どうだった?」
「仕事はネット上でも募集してるけど連絡先はレンタルサーバーで身元は探れなかった。所在地不明個人情報過少。…仕事の依頼でもすれば会えるんじゃないかな」
そうか、と返したクロロはすっと目を閉じた。
早くナマエに連絡してしまおう。暫くは休業しろと。でも普段携帯電話なんて使わないから不審だよな。そう思いポケットに伸びた手を引っ込めた。
仕事を依頼して好青年っぽく振る舞いこの前の物を奪う気だろう。ナマエも頭は良いから、話で決着がつかず闘り合いになった場合が一番まずい。もし逃げるという選択肢が無くなったら恐らくナマエは勝てない。
「そいつ、殺すならワタシが貰うね」
「どうするんだ」
「適当にいたぶる」
いたぶるなんて可愛いもんじゃねえだろうがよ。…まあ何にせよ、これで益々こいつらに合わせる訳にはいかなくなった。仕事の物盗られて拷問されるフルコースだぜ。
しばらくどっか遠くに身を隠すってのも良いか。ナマエが見てみたいっつってた雪でも見に北の方とか、森だとか山でも良い。この頃仕事も詰まってたみてぇだし、一目の着かない所でのんびりするのも悪くない。
まあ幾ら何でもそんなにすぐ実行に移したりはしないだろ。計画くらいは立てる筈だし。そう思って楽しそうな二人と殺気立つ一人を残しアジトを後にした。
守るべきものが既にその腕から離れているとは知らずに。
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