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「あなたには関係無いでしょ」


冷たく言い放ったつもりだったのに彼はまだにやりと笑ったままで、不愉快で、辛くて。失う物を自ら増やす愚かな人間の様にはならないと思っていた自分がこんなにも脆いなんて。
生きて行く中で良い事と悪い事はいつか同じ量になる。ぼんやりとその事に気づき始めたのは最近だ。折り返し地点が有る訳では無いと思う。けど何時か地に伏す時にはきっと、水平に均されたように頭に浮かぶのであろう。なら下がり続ける私のパラメータをこれから上げるのは一体何なのか。


「関係無くても構わねえがな、俺見て泣くのは止めろよ」


憎いのは雨に濡れながら笑う彼じゃない。弱さを捨てきれない自分だった。





帰るなりいきなり抱きしめて来たフィンクスに私は絶句するを得なかった。当然顔は見えず、余りにも力を入れるものだから苦しくて胸を押すと少し弱まった。その隙に手にしていた雑誌をなんとか持ち直す。声を掛けようかと口を開いたのと同時に頭上から声がした。


「逃げるか?」

「…は?」

「いや、だが…」


話しながら考えるのは止めて欲しいというのは何回言えばいいのだろう。というか、考えが口に出ていると言うべきなのか。未だ離れないフィンクスの背中を雑誌と手でぽんぽんと叩きながらそれを聞き流す。

彼が何故手ぶらで帰って来た、または来れたのかは分からないけれど、私の予想では私の正体がフィンクスとの関係を含め蜘蛛にばれたのではないだろうか。逃げるかと言ったのはその事だと思う。柄にもなく混乱したフィンクスは柄にもなく頭をフル回転させている。


「付き合ってるって言ったの?」

「あ?」

「ばれたんでしょ?」

「ああ、いや…」


はあ、と大きく溜息をついたフィンクスは抜けるんではないかと心配するほど強く頭を掻き乱した。


「俺がお前と面識ある程度だと…思う」

「ほぼ同意義」


数時間前フィンクスが出掛けると言った表情を見て、ああ旅団のところに行くんだなと本当は分かっていた。何で止めなかったのかは今は分からない。けど彼がそう決めたならどうして私が止められるのかと思うと何も出来なかったのかもしれない。

「フィンクス」

「…」

「団長さんがどこに居るか教えて」


私が旅団に命を狙われようとどうでもいい、と言うときっとフィンクスはすごく怒るけど、結局私はまだ彼の運命を左右させるような決断は担えない。
何があってもずっと一緒にいてなんて、言えない。


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