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結局ナマエが悩んでいるのは「自分がどの様にして居場所なり連絡先を知ったか」という事らしい。下手な事を言うと俺との接点が云々言っていたが聞き流したのではっきりは覚えていない。
ふと団長はまだアジトに居るんだろうかと思った。神出鬼没だからな。ナマエが直接会うとか言ってるし早くどっか行ってくれりゃあいいんだが。
ちょっと確認して来るか?まあ団員がひょっこり顔を出すなんてよく有る事だし怪しまれはしないだろうが、何と無くナマエに言ったら止められる様な気がした。
「タバコ買ってくる」
パソコンで何やらやっていたナマエは少し止まってから顔を上げ、じっと俺を見て来た。なんだ?まさかばれたんじゃ無いだろうな。流石に読心術なんて使えねえだろうし。
「本当にタバコ買いに行くの?」
「ああ、何だよ」
「 …だって、何時もはタバコ買いに行くときはちょっと出掛けてくるって言うだけだし、財布持ってない」
ひょいとナマエが持ち上げて見せたのは紛れも無く俺の財布で、そういえばタバコ買ってくるなんて言った事無かったかもしれない。いやもしかしたら言った事は有ってナマエが確認の為に嘘を言ったのかもしれないが、もうこの沈黙の後ではどんな付加も意味は無いだろう。
頭を掻きながら、ソファーから立ち上がったナマエを見て殴られると思った訳では無いが、何故かゆっくり目を瞑ってしまった。
「はい」
目の前からのナマエの声と腹に押し付けられた財布の感触に目を開けた。不機嫌になっているかと思った顔はいつも通りで怯む。そもそも自分が何故態々嘘を吐いたのかもよく分からないが、ナマエのリアクションが特に無い事に驚いて余計分からなくなった。いってらっしゃいと言う声もいつもと変わらず何処か不気味にも感じた。何故、と聞いたら多分「明確且つ決定的な理由が無いから」なんだろう。それに考えているからこそ冷静なんだ。
仲間を失わないように、か。
一瞬浮かんだ言葉を打ち消し、アジトに向かった。
結局団長はまだアジトにいた。面倒だ。
…とは言え俺の話術では到底あのケースの中身を諦めさせることは出来ないし墓穴を掘りそうだから話し掛けないでおく。ソファーに腰掛けた団長は背もたれに肘を掛け、多分誰かを待っているんだろう。本も持たずに何処か一点を見ていた。
俺も何時もの位置に座り軽くアジトを見渡す。ここには俺以外に団長を含め三人、いや一人シャルナークが部屋から出てきて四人。フェイタンは本を読んでいてノブナガはただ座って目を閉じていた。
「何か今仕事してないみたいだったよ。ネットのページも無くなってたし、控えておいた電話番号も通じなくなってた」
「居場所は掴めないのか?」
「仕事を依頼するのが唯一の接触するチャンスだったんだよ」
肩をすくめるシャルナークは溜息交じりに訴えたが団長は相変わらず背もたれに寄りかかっていた。
「…そいつ、シャルの目を欺いておまけにフェイに擦り傷負わしたんだろ?大した女だな」
笑いながらおちょくると、シャルナークには煩いなと口で、フェイタンにはドス黒い殺気で返される。
俺は情報だとか電気系の事だとかはよく分からないがナマエもやっぱり頭はいいんだなと思う。仕事の時は絶対に瞬間移動の能力を使うし、何度か見たあいつの戦い方自体強化系の俺からしたらまどろっこしい。常に次の事を考えてるって事なんだろうな。ずっと頭使いっ放しで疲れねえのか?あ、だからエネルギー不足で無表情なのかもな。
そんな事を考えていると、ふと団長が膝に肘を付き、指を組んで何か考えるような体制になっていたのに気付く。居場所が掴めないとなって作戦でも練っているんだろうか。
「やはり…フィンクス、」
「ん?」
不意に張り詰めた空気で身動きするのを忘れる。いや何か直感で危険を感じ動こうとした時にはもう団長の闇のように深い二つの目は宙ではなくはっきり俺を捉えていた。
「シャルナークもフェイタンも、運び屋が女だとは言っていない」
その瞬間俺を追う目は八つになった。
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