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結局これからどうするんだろう。思い立って家を飛び出して、怒られて連れ戻されて。陰口を言う訳では無いけど、隣でぐうぐう寝ているフィンクスがその先まで考えているとは思えない。


彼に出会うまで死というものを心から恐れた事は無かった。悪人も善人もいずれは辿り着くだけのものだと思っていた。間逃れる事のできない、必然的な物だと。死ぬ時は死ぬ。実力が物を言うこの社会で、私にとって死はとても軽かった。
フィンクスと付き合い始めてから自分に変化があるのは感じていた。話す言葉も増えたし、笑う事も出来た。
だから怖かった。だんだん自分が死を恐れていっているのに気付いてしまったから。失いたくない物が無い状態から、彼と、自分の命の二つに増えてしまったのが重くて、でも手放したくなくて。



中々寝付ける筈も無い。いいなあ、フィンクスは。こういう時は彼の能天気に近いところが羨ましくなる。

暫くぼうっとしていて、水でも飲もうかと身体を起こした時だった。今まで私が寝返りをうってもぐっすり眠っていたフィンクスが薄っすらと目をさまし、何時もより弱く腕を掴まれた。びっくりして思わず振り返る。

「な、何?どうしたの」

「…いや、またどっか行きやがるのかと」


確かにまだ寝ぼけているらしいフィンクスの呂律は危うい。半分くらい閉じている目も私の方ではなく何処か違う所をぼんやり見詰めていた。


「今度逃げたら、どっか縛り付けとくからな」

「…もう逃げないよ」


そう答えるとぐいぐいと彼の腕を引く力が強くなった。まるで駄々を捏ねる子供みたいで面白くて、もう目を瞑ったフィンクスに気付かれてはいないだろうが笑ってしまう。


「水でも飲もうかと思ったんだけど」

「うるせえ寝ろ」


遂に抵抗し兼ね私の頭はある程度勢いを付けて元ある位置に戻った。心無しか満足げなフィンクスにがっしりと腕を回され、今度は寝返りも打てなそうだ。
私が呼吸する空間を確保していると、布団を被り直しながらフィンクスはぼそりと呟いた。


「明日の事は明日考えればいいんだよ」


頭上から聞こえた声は反応する間も無く直ぐに寝息に変わった。果たして明日の朝、彼はこの一言を覚えているのだろうか。

まったく寝ぼけてた癖に、変に勘だけは良いんだから…。


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