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気遣い



キッチンの方に行ったフィンクスが帰ってこないな、なんてそちらに目を向けてみると、カウンターの向こうにインスタントコーヒーの瓶をまじまじ見つめる彼がいた。…一体何をしているのか。栄養なんて気にしないだろうし、原産地なんて見ても何にもならないだろう。不思議だ、とその後のフィンクスの行動を見ようと思っていたら目が合い、こっちに来いと手を招かれた。


「何見てたの?」

「入れてくれ」


なんということか、フィンクスはインスタントコーヒーの入れ方が分からないのだという。インスタントという言葉が手のかからないという意味であるのは彼には関係ないというのか…。
そういえば家にいるときは大体私が入れてるし外でなんて自販機のボタン押せば出て来るもんね。

適量をカップに入れてお湯を注ぐ。乾燥した泥のようなものが見知った姿に変わったのに驚いたのか、フィンクスはカップの中を覗きながらおぉ、と感嘆していた。


「言ってくれれば入れるのに」

「ん、あー」


ソファーに戻りなからコーヒーを啜る。零さないでよ、と彼を見るとガキか、と返された。



「お前今日仕事だったろ」先に座ったフィンクスが視線はテレビに向けつつどこか照れ臭そうに、小さめの声で呟いた。
そうか、今までコーヒーを入れる私をまじまじ見てたのはそういうことだったのね。なんだか嬉しいのとどこか可笑しいのが重なって、思わず笑ってしまった。


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