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日跨ぎのルール



いつかの年末のこと。
テレビがいつもより派手だなあとなんとなく眺めながら隣でビールを飲んでいるフィンクスのつまみを一つ頂戴する。今年、といっても特に何か凄い出来事があった訳でも無く、某然とまた一年経ったのかと思うだけで有り難みは特に無かった。

後三分。
テレビの番組の司会者らしい人物が他の大勢の参加者をバックに今年あった事なんかを話し出した。とそれを見てフィンクスが口を開く。

「ああ、そういえば」

ぐいっとビールを飲み干して新しく缶を開けながら、フィンクスは口を半分開けたまま私の方を見る。こんな時に世間話だったら彼らしいななんて思いながら私も缶を手にしてみる。

後二分。
開けたままのフィンクスの口につまみを入れて見たら食べた。突然目を開けたまま寝た訳では無いようだ。


「何か思い出せないの?」

「いや、」


ちら、とテレビを見たフィンクスは口をもごもごさせてからまたビールを飲んだ。空き缶は四つ。別に酔っている訳でもなさそうだし、もしかして眠い?

後一分、
ようやくフィンクスが口を開く。


「お前が今年探してたもんで見つからなかったのは?」

「…今のより軽い、掃除機?」

「いやそうじゃなくて、無くし物でってことだよ」


ああ、と考えて思い出したのに、夏くらいに無くなったパソコンのマウスがあった。別に拘りが有るわけでも無いし特別な物でもなかったので、おかしいなと思いながらも新調したのである。
それがどうかしたのかとフィンクスを見ると横目でテレビを見ながらまた口を半開きにしていた。やけにテレビが騒がしくなって来たから見ているんだろうと思ったら彼はタイミングを測ったかのように声を出した。

後五秒。


「それ酔っ払ってて俺が捨てた」


は?と聞き返そうと口を開いたとき、テレビの騒がしさが最高潮に達した。年が明けたんだろう。二つの事が重なって少し怯んでいると、目の前のフィンクスは薄っすらにやけながらまたビールを飲んだ。

私は数秒経ってやっと彼がやろうとしていて実行までした事が分かった。フィンクスの行動は日頃からよく分からない所があるが、今回のは今までで三番目くらいに私を驚かせた。
つまり、


「いや別に、年内に言った事は次年に持ち越されないなんてことは無いです」

「げ」


しくった、といった顔をしたフィンクスは私の持っていた缶を開けて半強制的にビールを飲ませた。いやいや酔ってからなら忘れるかもしれないけども、と彼の腹を足で蹴るが止まらなかった。

今年もどうせこんなよく分からない事言うんだろうけど、まぁ…フィンクスだし、いいか。



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