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湯たんぽ代理



「嫌だなあ、冬」


カーテンを閉めに窓際に立ったナマエは溜息混じりにそう呟いた。言いながらも結露した窓を触り冷たさを確認したらしく、濡れた手を払いながら室温を確認する。


「お前それ夏にも逆で言ってたぞ」


自分は気温による快、不快は感じやすい方だしよく口に出していると自覚しているが、こいつも大概だ。思い出したようにぽつりと呟いては上着を掛け直したり珈琲を入れたりなんとも忙しそうにしている。

ふう、と何度目かの溜息を吐いてからキッチンへ向かったナマエはきっと俺の分も珈琲を…


「ないんかい」

「?」


マグカップに口を付けながら不思議そうにこちらを見るナマエは新聞を片手にくつろごうとしている。まあそんな都合よく意思疎通出来はしないだろうとは思ったが、なんというか、もう既に珈琲を飲む気分になっていた訳で。突っ立ってぼーっとするナマエを呼び寄せてマグカップを横取りした。


「ちょっと、」

「俺も丁度珈琲飲みたかったんだよ」


ソファーに座り直すが当然ナマエは取り返そうと腕を伸ばしてくる。ああ、なんかセーター着てるし温そうだなあなんて考えながらその腕を引っ張って手中に収めた。


「よし、解決」

「…してない」


ナマエがこちらをじろりと見てきた辺りで飲み切ったマグカップを渡す。我ながら悪い表情でにやりと笑うとナマエは腕を伸ばしぺちっと俺の頬を叩いて脱力したように丸くなってテレビを点けた。

あー、平和なもんだなあ。



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