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分別不可能
フィンクスは何時頃帰ってくるんだろうなんて考えながらふとテレビを付けるとドラマか何かがやっていた。
暫くぼーっとしながらなそれを眺めていたけれどいきなり主人公っぽい俳優がフルフェイスかつ全身タイツ…いやスーツというのか、に変身し出し吃驚して内容を耳に入れた。
か弱き者を魔の手から救うの使命であるらしい彼らは敵か何かを撃破しポーズを決め去って行く。多分毎回こんな感じなんだろう。
残念ながら視聴しようという気は私には起きなかったが、その時の台詞が何だか胸上くらいでつっかえて、誰かに話したい気分になった。
まあ誰かと言っても一人しかいないんだけど。
「お前戦隊モノ好きだったか?」
スタッフロールが始まった辺りで帰宅したフィンクスはソファーの後ろに立ってそれを見ていた。
「最後にね、正義は必ず勝つ!だって」
「下らねえ、勝つのは強い方だ」
うわ言だけで強くなれるなら誰でもそうする。正義だとか誇りに駆られて戦う人間を馬鹿だとは思わないけど勇敢さだけで生きていけるほど世界は甘くない。…なんて一般大衆向けの番組に言ったらだるそうに隣に座ったフィンクスとかに大人気無えとか言われるんだろうな。
流星街出身らしいフィンクスはきっと幼少からその事に気付いてたんだろうけど、それでも弱音を吐かないのは彼らしいっていうか、意地っ張りというか。そういうところは小さい時から変わらないんだろうなあ。
「ま、案外俺たちが正義なのかも知らねえぞ?」
「いやいや、私はともかく」
「んだと」
善か悪かなんて自分で決めるものだ。そうでなければ世界はみんな仲良しなんて気持ち悪い事になるもの。他人が自分たちをどう見ようと関係無い。自分の信じるものを信じて、好きなものを好きになるだけ。それで十分。
「ところで、帰りに頼んだ晩ご飯の材料を忘れたら悪だと思うけど?」
「…」
寝る体制に入ったフィンクスにそう言うと彼は無言で立ち上がる。ポケットに手を突っ込んで真っ直ぐに玄関に向かった彼が分かりやすぎて思わず笑ってしまった。
ま、要らない事考えてたついでに着いていってあげようかな。
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